色々な練習があると思います。
「何故弾けないのか」「何故美しくないのか」と、興味を持つことができれば希望は持てます。
しかし、それほどうまくいく子ばかりではありません。
そんな時は意外と、荒療治も良いかもしれません。
まず無駄な力が入っていては、苦しくて、速く弾けなかったり、音が出なかったりします。
脱力は何でもない事のようで、難しいようです。
「力が入っていたら弾きにくい」という事をしっかり印象付けることも経験として覚えておくとよいかもしれません。
肘から手までを目いっぱい力を入れて弾いてみましょう。
1本ずつの指はほとんど動きません。
肩にも力が入り苦しいと思います。
こんなに苦しい思いをして、良い音がでるはずはありません。音が出ない事が実感できると思います。
その後、同じところを「力を緩めて」弾いてみます。たいていの場合初めは指先まで緩みふにゃふにゃな指で弾いてしまいますが、苦しくはありません。その後は、同じ腕の状態のまま、一つの指だけに重みを乗せるようにしていきます。
脱力した状態を保ちながら、少しずつ、指の支えをもって弾くようにすると、良いと思います。
「乱暴に弾く」ことも、時には効果があります。
子どもたちは、自分では「乱暴」だとは思っていないので、それを自覚してもらうために、私が「こんな風に弾いているよ」とわざと乱暴に弾き、それがいかに美しくないことかをみせるのです。
「乱暴」を自分でも体験し、「こんな風には弾きたくない!」と確認することからも、意外と、音を聴くようになります。
たとえば、フレーズの最後を聴かずに、「プツン」と乱暴に弾いてしまう人がいますね。
もっときつい音で、わざと「プツン」と離し、それがいかに乱暴で心がこもっていないように聴こえるかを自覚させると、かなり気をつけて聴き、弾くようになります。
自分の音に対する理想と、認識をはっきりさせるため、「良くない例」をはっきり知っておくと良いですね。「良くない演奏」を防止することにもつながると思います。
音に対する感性が敏感な人と、音が出てさえいればよいという感覚の人とがいます。敏感で音を出す事を楽しむようになって欲しいですが、そうでない場合も、だんだんに美しい音への関心と認識を高めていく必要があります。
あるまったくピアノの弾けないお母さんが、(そういう方の方が「鋭い」ことがあります)「発表会を聴いていると、先生のところで習い始めた順番がわかります。長くいる人ほど、音が良いです。」と言ってくれた事があります。
だれでも、美しい音にあこがれ、だんだんそれが出てきて嬉しくなると、更に美しい音を求めるようになります。ですから、それに気づかせてあげることが大事です。
美しく出ない原因を知らせ、共に追求していく事は、お互いが求めさえすればとても楽しいことだと思います。
美しい音は聴いている人と共有できます。
ご家族の方はぜひ「練習しなさい」と言うより、「きれいな音聴きたいな!」と応援してくださると良いですね!
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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