「すぐできる」とはいかないこともありますが、「すぐ忘れる」というのは、とても多い。
しかも「すぐできたのにすぐ忘れる」のはとても残念なことです。
特に小さい人たちの場合、この傾向が多く見られます。
感覚で「そうか!」と思ってか、単に真似する事が上手で、その場ですぐ出来るようになります。
こちらは「すごい!」などと思っているのに、翌週はまた元通り。また同じことを言います。
また、こちらの言うことの意味がわかってすぐにできてしまう子は、家で繰り返し練習をしないためか、身に付かずに同じ事を何度も言われることがあります。逆に、何回やってもその場では要領を得ず怒られてばかりなのに、翌週はちゃんと直してくるというタイプの生徒もいます。
知識を教える時は、もっと極端な場合があります。
たとえば「cresc」の意味を教えた結果、だんだん強く弾く事が出来、ぐっと表情が豊かになります。
しかし違う曲に出てくると、その楽語の存在自体に気づかず、もちろん、その通りに弾かない。
「読み方は?」「意味は?」と毎回尋ねなければなりません。
これはごく一部(一割くらい)の「良くできる子」以外は同じです。
そのことがわかっていて、嘆くだけでそのままにするのはこちらの問題です。
生徒が初歩の頃は、書かれている事(楽語や速度記号など)すべてについて、出来るだけ質問をするようにしています。
しつこく繰り返しても、毎回はじめて知ったような顔をする子もいますが、とりあえず忘れていたことに気づき、書いてある事が(曲の)表情につながると、確かによい演奏になります。
おそらく、自分で弾く時には私が考えているその曲の表情などということまでは注意がいかず、ただ書かれている音とリズムを音にすることだけで、満足しているのでしょう。
せっかく弾くなら、美しく感じながら弾いたらいいのに!と思いますが、それが伝わらないのも、指導者の責任。
結局、繰り返し続けることが大切です。「わかって」弾くと、表情のある演奏になることを、実感させ続けたいです。
何調の曲か?ということも知らずに演奏している子が、過去には多かったです。私の使っているバスティンメソードでは、導入のレベルで、全長調の調号を、カードなどを使って覚えます。幼稚園児が調号を即答します。「天才!」などと思っていると、2?3ヶ月カードをしないうちに、まるで忘れています。がっかり!
これも毎年のことなので、そんなものかと思っていましたが、それをそのままにしているこちらが悪いと気づき、近頃は、継続的に毎日「1分ゲーム」として、調号カードが何枚言えたか記録をとることにしました。(他にも、5音メロディーカード、音程カード、リズムカード、指番号カード、指番号カードなどもセットで作り、記録しています)
何でも、継続する事は大変ですが、価値のあることです。
繰り返しと、飽きさせないという事が、とても大切なポイントです。
楽典的なことも、その必要性がわかるような指導を行い、初歩の頃から、楽譜に対する興味をしっかり持って欲しいと思います。幼児の頃に楽しく楽典を学べるよう、かわいい絵のドリル(東音企画)も作りました。このきっかけは、生徒の母が、子供が導入期の時、毎日手作りドリルを作って繰り返し、楽しく身につけていたことにあります。
すぐ覚えられる浅い記憶が「楽しい」繰り返しにより、深く身についていくように願いたいものです。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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