読譜というと「音名を読む」ことを思い浮かべると思いますが、音楽はメロディー、リズム、ハーモニーで出来ていますので、当然、その3つを読みとって音にできる事が大切です。
一般的なリズムの種類は、そうたくさんではありません。前回触れたような特別な連符もありますが、それはほんの少しだけ。多くは基本的な4分音符や8分音符で出来ていることが圧倒的に多いのではないかと思います。
「読譜」の章の最初の方で、音程について触れました。たくさんある2度や3度(特に2度の音階)が土台になるので、それが丁寧な美しい弾き方だと全体的に良い演奏になり、その中で特別な音程や臨時記号による変化音を活かすことによって、更に豊かな演奏になると思います。
リズムも同じです。基本になる拍を刻むリズムを正確に安定させ、その上で特徴のあるリズムや想いの感じられる連符などを加えると、それらが活かされ、良い演奏となるのだと思います。
ただ、土台になるリズムについては「感」のところで触れましたが、「リズム感」とも言うように感覚的なものですので、それによって優劣が左右するものではないかと思います。
4分音符が並んでいるものを弾く場合でも、リズムが生きて聴こえる場合と、ただ感情なく並んでいる場合とがあると思います。
よく「流れがない」「フレーズを大きくとらえましょう」等の講評を目にします。確かに、同じテンポで弾いていても、生き生きとして速く聴こえる演奏と、もたもた遅く聴こえる演奏があります。後者が「流れがない」演奏と思います。
その解決策は?
「前に進むように」などといった何とも感覚的な言葉かけをします。
気分が乗って楽しくわくわくしている時は音楽にでます。リズムもいきいきしてくると思います。いかに気分を高めるかが、ポイントのように思います。
読譜をするときは、正しいリズムで弾いていくと同時に、(メロディーと同じように)あるまとまりを持ってとらえ、それをリズミカルに弾いていくよう心がけると、良いと思います。リズムもメロディーと同じで、その曲の中でよく使われるリズムパターンがあります。繰り返されるリズムパターンを、生き生きと楽しく感じて表現し、特別なリズムを見落とさず、より意識して表現していくと良いと思います。
特別なリズムとして、弱拍が強くなるシンコペーションのリズム、気持ちが少しこもるような付点4分音符(4分音符を基準とした拍子の時)、「想い」のこめられた連符。その曲中そこだけしかないようなリズム。左右で異なるリズム(3分割と2分割)等があります。
特別とはいえませんが、長い音符も重要な事が多いと思います。逆に細かい音符で刻まれているところも、面白いところです。
細かい音符は、重要なパッセージではっきりさせた方がよい場合と、あまり一つ一つの音を際立たせないほうがよい、背景のような役割の時もありケースバイケースですが、難しいと思わず、ここぞ!という気持ちで取り組むと良いと思います。
リズムも良い演奏にはとても関係することです。時々、難しいリズムを大雑把にとらえて、何となく済ましてしまう人がいますが、難しいリズムほど、面白いと思います。基本的に拍をしっかり取り、それを基準に、機械的でないけれども、正確な、分割や延長が心に馴染んだ状態で出てくるように、できれば、読譜をする始めの頃から、良いリズム感を目指す事を忘れず弾いていくと良いと思います。
エピソード1
ある高校生が他の教室から移ってきました。
とてもテンポのふらつきがあるので、「メトロノームをつかって練習したら!」とアドヴァイスをしたら、「使っています」との答え。
確かに、メトロノームをかけるとちゃんと合います。でも、ないとやはり不確実です。
彼女は、メトロノーム依存症とでも言いうのか?それに合わすことは出来ますが、自分の心の中に、自主的には拍がなかったようです。
必ず、一定の拍が自主的に心のなかに刻まれていないといけないと思います。
エピソード2
リズムを考えるのが面倒で、少し劣等感を持っている子がいました。「よくわからない」と思い込んで、少し複雑なリズムはたいてい間違えます。私も「この子はリズム感が良くないから! 」と決めつけているところがありました。
ある日荒療治として、とても難しい、付点のリズムなどが多くてリズムに乗らないとサマにならないような曲(湯山昭先生:お菓子の国「ホットケーキ」)を与えたところ、驚くかな、これは本気で考えないと弾けないと思ったのか、ちゃんと弾いてきました。その子にはその後も、ジャズ風な、乗りの良い生き生きしたリズムの多いものを積極的に弾かせたところ、リズム感が悪いなどとは決して思えなくなりました。
たぶん本人も、悪いと言う思い込みがあったのだと思います。ふとしたきっかけで、改善される事があります。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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