メロディーの即読譜法についてお話しました。
「即読譜法」では、線と間を見分けることで音程が即答できるようになります。でもピアノ曲はハ長調ばかりではありません。何調で、どの音を使うのか(どの音にシャープやフラットをつけるのか)が確実に把握できていないと、せっかくの「即読譜法」も通用しなくなります。
作曲家は「この調で書きたい!」と考えて調を決めています。どの調も同じニュアンスなら、ピアノにとっては一番弾きやすいハ長調の曲ばかりでも良いわけです。各調の持っている雰囲気はもちろん違います。
各調で使う音、つまりそれぞれの調の音階をきちんと把握して扱い慣れる事は、即読譜法の「90%に近い2度3度を即、弾けること」にもつながり、たいへん重要です。
たくさんの調号が付いている曲を難しいと思ってしまわず、ピアノを弾く基本の基本と思って、親しんで得意になってください!
そのためにはまず、音階の仕組みを楽しく、深く印象に残るように理解してください。(もちろんご存知のことですが、生徒さんに理解していただくために)
「ドレミファソラシド」と白鍵ばかり弾くと、美しく明るい長調の音階が聴こえます。
では、隣の「レミファソラシドレ」と弾くと?少し変わった感じですよね?
同じ白鍵でも、間に黒鍵がある場合(全音)とない場合(半音)の組み合わせが違うからです。
ある音からお隣同士が、全音―全音―半音―全音―全音―全音―半音(全全半全全全半)という並びにすると色々な長音階が出来ます。
これを、私は、2色(全音と半音)のカラークリップで「魔法の音階クリップ」を作ってもらっています。
作ったら、それを使って、いろいろな音から音階を作ってもらいます。
つながった色クリップを見ながら、先ほどの「レミファソラシドレ」がニ長調だとしたら、ミからファは全音になるはずですので、一つ鍵盤をあけるために、隣の黒鍵(ファの♯)になります。ファ♯からソは、半音なのでちょうど良く、更に確認していくと、シとドも同じように、(長音階では)全音であるべきですが、そのままでは半音になっているので、ドにも#が付きます。
それを弾くと、「レミファ#ソラシド#レ」となります。弾いてみると、たしかに長調の音階になっていますね。
自分で音を並べて美しい音階が出来上がったことや、音階クリップを作った体験を思い起こすことによって、調号の必要性を納得し、調号を落とすことも減り、すらすらと即読できる近道になると思います。
また、作った音階をたくさん弾いて、その調の色合いや、指使いなどにもなれて欲しいです。
ただ、いつまでも音階作りから考えていては大変です。音階の仕組みがわかったら、各調の調号を覚えて、即、それぞれの音階を弾けるようになると良いですね。
14「レガートは歩くことと同じ、自然に歩こう」の番外編で書いたように、基本のハ長調(Cメジャー)の指使いをまずマスターすると、CDEGA(ドレミソラ)からはじまる調の指使いはまったく同じです。
いくつかの指番号グループに分けてみます。
第一グループ CDEGAメジャー(「ハ」「ニ」「ホ」「ト」「イ」長調)
右手:12312345
左手:54321321
第二グループ FBメジャー(「ヘ」「ロ」長調)白鍵始まりの例外
Fの右手:12341234 左手:第一グル―プと同じ
Bの右手:第一グル―プと同じ 左手:43214321
第三グループ D♭E♭G♭(右手)A♭B♭ 黒鍵始まりの調
右手:黒鍵2つのところは23、3つのところは234の指を置く
黒鍵から白鍵に移ったところで1を使う。
※例
開始音がD♭の場合:黒鍵2つの左側から始まるので、2の指から始める。
白鍵になるファとドの時に1の指を使うので、23123412
左手:3の指から始まり32143213
※例外:G♭だけ右手と同じで、43213214
指は、5本しかないので、8つの音の音階を弾くには、指替えが必要です。指番号の原理がわかった上で、第一グループから練習を開始して、すらすら得意に弾ける調を増やしていくと良いと思います。
「曲中での2度と3度が締める割合=90%」の内でも更に、2度(音階を弾くのと同じ)の締める割合は多いと思います。
楽譜を見ると、連載第46回でしたように、「線⇒間」「間⇒線」となっている2度を青線でつないでみると、たくさんの青線が引かれることになります。それを様々な調の音として把握してピアノを弾く事によって、本当の意味での「読譜得意」となり、ピアノが大好きで、「初見で何でも弾きたくなる人」を増やすのだと思います!
私の使っているバスティンメソードでは、音階と主要三和音をマスターする事をとても大切にしています。2巻で音階を習ってからは、各巻の終わりに、音階の一覧表がついていて、音源を聞くこともできますので、その調特有の感じに馴染むことができます。ただ音階は弾いて調を覚えるのは面倒ですが、練習のやり方次第でステキな思い出となります。
調号を読む速さは「毎日一分ファイトゲーム」と名付けたゲームで、毎日鍛えるようにしていますが、レッスンのたび、最初の1分間を使って成果を確認。2週間ごとにチャンピオンを発表しています。
調号カードの先週のチャンピオン(小3)は1分間に94枚も読めました!
子供はすぐ覚え、すぐ忘れます!楽しく忘れないように導くのも指導者の仕事です。 常に工夫を心がけ、基本の音階を覚えさせることに結び付けたいと思います。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
トラックバック(0)
トラックバックURL: http://www.piano.or.jp/mt/mt-tb.cgi/9568