前回の「即読譜奏(即読の感覚で弾く事)」、難しそうな呼び方のわりには、簡単だと思っていただけましたか?
しかし、あまりに「音名はどうでも良い」ととらえられてしまうと困るので、今回は音名も「即読譜」します!
まず前回「曲の中で90%を占める」ことがわかった2度と3度の部分についてです。
「2度」とは、楽譜上にある音が上下どちらかの隣の音に進むことです(間から線、線から間)。
上に進むなら、音名は「ドレミファソラシド」の順、下なら「ドシラソファミレド」の順ですね。
たとえば楽譜上で「2度上がっている」部分を見た瞬間、「音はドからレ」⇒「使う指は1と2」という具合に、一音ずつ考えるのではなく、その音がどうつながっていくのかを考えて弾いてください。
「ト音記号の第二線だから『ソ』の鍵盤を弾く」という感覚だと、音楽的にはなりにくいと思います。
次の3度進行は、ある音が上下どちらか隣の線や間に進むことです。(線から線)(間から間)
(最初の音をドとして)上に進むなら、音名は「ドミソシレファラド」。下なら「ドラファレシソミド」となります。
和音の基本形は3度の積み重ねですね。根音がドなら「ドミソ」。ファなら「ファラド」です。3度音程の音を、3つつながりで言ったり弾いたりしていると、早く和音を弾くことができます。
3度の進行も「ドレミファ・・・」と同じく、何度も言葉にするうち簡単に「ドミソシレファラド」という順番を、覚えられます。
ぜひ、2度進行と3度進行の音名を繰り返し言葉で言って、楽譜を見て指と音名がすばやくつながり、音を出せるようになるまで慣れていってください。そうすれば曲の90%が初見で弾けるようになります!
では、残りの10%についても考えてみましょう。
次の項から具体的に進めていきますが、この少ししかない「音程の跳躍しているところ」はたいてい曲の盛り上がるところで、作曲者の想いが深い部分であったり、何らかの表現をしたいところです。
そのような部分は、すらすら弾けないかもしれません。
しかしだからこそ大切に弾いてください。
きっと、何か感じるところです。
では、跳躍部分の音名はどのような繋がりなのでしょうか?
4度音程なら「ドファシミラレソド」・・・シのところから読むと「シミラレソド・・」
これってフラットの調号の順番ですね。
5度音程なら?「ドソレラミシファド」・・・ドの前にファを加えると「ファドソレラミシ」シャープの調号の順番です。
6度は上がると「ドラファレシソミド」これは、3度で言いなれた下降形。もちろん6度下なら「ドミソシレファラド」。
7度は?もう気がついていますよね。
上がると「ドシラソファミレド」下がると「ドレミファソラシド」です。
転回音程という名前で、楽典の試験で出てきましたが、実用性はこんなところにあるのです。気づかなかったのでは?
こんな風に、いろいろな音の組み合わせも知っている音のつながりと同じです。
特に10%の「特別な音程」について注意をしてみて下さい。
その部分の「音程」「音名」を丁寧に読譜し、「印象に残すようにして間違えない」というようになれば良いのではないかと思います。
4度と5度は指を広げずに弾ける音程です。1つの鍵盤に1つの音という感覚を早く身につけ、指を見ないで弾けるようになる事も、初見奏には大切なことです。
読譜が得意でない子の多くは、弾けるようになった曲は何回も弾きたがりますが、新しい曲は嫌がります。そして、早く暗譜してしまって楽譜を見ずに弾こうとします。「鍵盤を見ていないと心配」という感じです。そのような子はたいてい鍵盤と指の感覚もなかなか身につかず、あやふやに曲を覚えてしまうので、その音楽の「どこが作曲者の表現したいところなのか」を楽譜から学べないことが多いです。
日本人なら誰でも日本語がしゃべれ、読み、書く事ができるようになります。
楽譜も同じです。でも、そのためにはたくさん使い慣れなければなりません。
いちいち「この字は何かな?」と考えずに日本語が読めるように、得意になってたくさんの曲を弾くことによって、各ドレミの音名もすらすら読めるようになります。
楽しく、どんどんピアノを弾かないと、そのうち弾きたくなくなりやめてしまうかもしれません。さびしいですね(因みに、私も英語はかなり勉強しましたが、今でもしゃべれません)。
楽譜を読み取っていくととても面白い事がたくさん見つかります。
昔の人で、もちろん実際には会うことができない作曲家と本当に会話をしているかのような、彼らの気持ちを想像出来るような感じが得られます。そのような深い読譜をして欲しいので、まずは是非すらすらと音にできるようになって、その上で「意味」を見つけ、美しい音楽を生み出して欲しいです。
ピアノは誰でも弾けます!
でも、最初に、楽譜を読み取る事が苦になるか、楽しくなるかで、随分楽しさに差が出てくる気がします。是非、「音が苦」でなく「音楽」になりますように!
「読譜のポイント」は「即読譜奏」の紹介からはじめています。私の講座を聞かれた方には目新しいことではありませんし、初めての知る方には、文章だけで理解していただけたかが少し不安です。
ともかく、「1つの鍵盤に1つの音という感覚」を身につけるのがとても大切な点です。これを身につけて、少しでも読譜得意になってくれると良いと思っています。
読譜の導入の時には、グループレッスンをしています。
小さい子をやる気にさせる「4つのポイント」というのを、ある幼稚園の先生がテレビで言ってらっしゃいました。ご紹介してみましょう。
1、競争したがる
2、真似したがる
3、ちょっとだけ難しいことをやりたがる
4、認めてもらいたがる
という子供の性質を踏まえて、いろいろなことに取り組ませている。ということでした。
まさにピアノ導入期の子供にも同じ事が言えます。
これらを上手くレッスンで取り入れるために、グループレッスンは最適です。
読譜導入の時はグループレッスンならではの、ゲーム、色塗り、体を使うこと、物まねなどの要素を使って学ようにします。
1音の音カード(大譜表上に一音かいてある)の音名をすごく早く答えることができ、どの音もわかっている子が、いざ音がつながって「曲」になると、まるで弾けないということもあります。
また、みんなは「目で見て即、弾く」という事が上手く出来るようになったのに、一人だけいちいち鍵盤を見てからでないと弾けない子がいました。
その子を観察していると、手の形がまだ出来ず、一つの鍵盤に一つの指を準備するということが出来ていませんでした。
そのため、たとえば「ド―ミ」という3度進行の部分で、運指は「1から3」とわかっていても、3の指が上に向いてミの鍵盤上に準備していないため、「ミの鍵盤を見てからそこに指を持っていく」というような手間をかけていたのです。他の子は「楽譜を見て3度」⇒「1から3」と指が反応した時点で、「ドミ」の鍵盤を弾いています。「即読譜奏」で、すらすら弾くことに慣れるためには、指の形を整えることがとても重要です。
そのグループレッスンで読譜が得意になった子は、次の段階で飛躍的に伸びます。
私の教室では、違う曲を何曲弾けるかな?ということを記録していますが、小学3年生で、すでに1800曲を超えている子がいます。ピアノが大好きで、ステキなピアノを弾いてくれます。
「すらすら弾けない」と思ってしまった子は、やはり「覚えて弾くタイプ」になり、当然、あまり練習もできず、進度はとても遅いです。でも指の形はとても良くなり、しっかりと手が成長し、とてもよい音を出します。その子にはいつも言っています「大器晩成!」
二人とも大切な生徒です。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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