モーツァルトは「音楽の最高の効果は、流れる音の間に現れる無音の状態にある」と言ったそうです。
先日のピティナ・ピアノフェスティバルで、私の尊敬する土田英介先生が「ハイドンの曲を生かすのは休符だ」とおっしゃっていました。
音のない空間。
それは、場面が変わるところだったり、ほっとしてお休みが入るとき、次を驚かすための間、あるいは息つぎの為のものだったり、リズムを生かすためのものだったり、、、
曲の最後に休符がある場合が多いですが、聴く側は余韻に浸っているのに、演奏者がさっさと立ち上がったりすると、興ざめしてしまいます。
作曲者は、考えて必要だから空白を作っているはずです。
ですが、弾くことばかりに注意が働く傾向にあるピアノという楽器では、特に小さい子は「その音をどこまで保つか」ということに対して意識が薄いことが多いようです。
休符という音のない空間、「間」が曲の表情に大きく関係すると思います。
良く音を聴いて心の中で歌えている人は、休符がうまく取れています。聴く人の心の中の流れと一致して心地好く、音楽的です。
逆に、弾き急いでしまう演奏は、たいてい休符のところがより短く焦ってきこえます。
16分休符が沢山入っていている楽譜は書くのもめんどくさそうですが、わざわざそのように書いてある場合などは特に「意識的に空間を入れて生き生きと!」という意図を感じます。バッハの曲であらわれる突然の中断は、死や罪をあらわす、などとも言われています。
生き生きと弾いてほしいときや、意味を持ってほしいところなど、休符にイロイロな可能性を感じとって、演奏に活かして欲しいと思います。良い演奏家は無言の空間を巧みに、効果的に使っています。
ショパンコンクールinアジアで、日本に居ながらアジア各地の子供達の演奏を聴く機会があり、びっくりしたことがあります。
休符のたび(フレーズの合間でも)に顔を変えるのです。
すごく暗い顔になったら、それ以上に暗い感じの音がでて、ニコッとした次の瞬間に出てくるのは、天使が出てきたかと思うような美しい音。休符が絶妙に生かされていました。
すごい形相の変化に思わず苦笑しながらも、その表現力にぞっとした思い出です。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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