100のレッスンポイント

029.気分は音にでる

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2010/06/18

 ピアノの先生は、生徒ピアノの音で、その子の生活や性格、1週間の出来事などを読み取る事ができます!

 音を聴かず、荒っぽくフレーズの最後を聞かず乱暴に弾いてしまう人は、たいてい性格にも粗さがあります。
 同一小節内に再び出てきている臨時記号をよく忘れてしまうような人、ミスリーディングの多い人は、テストでもケアレスミスが多いです。
 人の話を聴かず、こちらが話しかけている途中で弾き始めたりする人は、自己中心的だったりあわてんぼうが多いです。これらの話は、後日の連載記事でたっぷり触れたいと思っています。

 上手だった子が、突然、荒っぽい音になってしまった!
この一週間何があったの?と聞くと、たいていトラブル発生です。お母さんとけんかしたとか、いちいち文句を言われていらいらしたとか。
 そのまま音に出てきます。

 練習ができなかったことも含めて、良い状態で練習できなかった次のレッスンでは、必ず自信のない音になってしまっています。
病気だったのとか?なぜ、できなかったのか尋ねる羽目になります。

レッスンの中で一生懸命になって追及すると、途中で「うるさいな!」と言うような音が返ってくる事があります。そういう時は「こちらも本気でしているのに、誰のために言ってると思っているの!」と、即注意(激怒)します(笑)。怖いですね。気分が即、音に出てしまうのですから。

逆にちょっとした美しいハーモニーのところを「ここステキね!」などと言って、本人も共感して弾いてくれた時には、明らかにステキな音が出てきます。これも気分が音に出ているのです。

 レッスンでは、少しでも音楽を良くしたいという真摯な気持ちをもち、それを願う先生の思いも汲みながら、ピアノを弾いてもらいたいです。
良い気分、良い状態で美しい音が出て楽しいレッスンとなり、その感触を家でも忘れず、定着できるようになると、上達はとても早いと思います!


★エピソード

 昔、当時6年生の生徒が、随分きつい、荒い音になってしまった事がありました。  1週間様子を見ましたが次の週も変わらないので、理由を尋ねたところ「だって、お母さんが包丁を持って飛んでくるんだもん!」というのです。
 そのお母様は、娘のピアノで気になるところがあると、お料理の途中で包丁を持ったまま、台所からすごい足音をたててやってくるのだそうです。

 その足音を聞くとどうしてもガンガン、クレッシェンドしてしまうそうです。性格の弱い子でしたら、しょげて弱々しい音になるのかもしれません。しかしその親子は両方とも気が強いたちでしたので、どんどんきつい音になっていったのです。いらいらした気分は練習の間じゅう続きます。それを毎日のように繰り返されてはたまりません。きつい音で練習してきた1週間の後は、信じられないほど汚い音で弾いてしまう事になりました。

 この当時の生徒さんはお母様の音楽理解力を超えるほどに成長していましたので、結局、お母様に「これ以上の口出しはせず、子供に任せてください」というお願いをしました。彼女はその後芸高、芸大へと進学し、ピアニストとして活躍するまでに成長しましたので、その時の指示は適切だったのかな?と思います。その彼女も、一児の母となりました。きっと、母親の気持ちがようやくわかることでしょう。




池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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