良い音を創り、人の心に届かせるには、空中に音を飛ばすような感覚で弾かなくてはなりません。
それには、出した音の行方を聴く事が大事です。
この100のポイントの一番で述べたように、その出した音が、自分の耳にも帰ってきて、美しいと持った時、良い気持ち(リラックス状態)になり、また、次の音を楽に気持ちよく出すという良い循環になるのです。
私の教室では、コンクールの時期にホールでリハーサルをします。800人が入るホールで、コンサートグランドピアノを弾くのですから、当然良い音が出るはずです。が、、、うまく響かせている人と、こもったような音を出す人とがいます。ホールの反響板のおかげで、一定の響きはあるのですが、いつもよりは響きがあることに満足してしまい、うわべだけしか弾かないで、結局、こもった音や、薄っぺらな音になってしまうことがあります。
でも、そのことに気づけば、やはり随分成長します。ホールでの経験はとても貴重で、自らの音を改めて良く聴くことができます。また同じピアノでの他の人の音を聴き「ステキだなあ」とあこがれる機会になります。
普段の練習でも、大きなホールの一番後ろの席の人まで、音を届かせるつもりで練習して欲しいと思います。ピアノは自ら響こうとしています。それをうまく使って、思い切り音を出す練習をしてみましょう。大きな音が出ることに躊躇してはいけません、楽に大きな響きが出ることをうれしく感じると良いと思います(「試してみよう」をご参照下さい)。
自宅で練習する時、狭い部屋の中で思いきり弾けないこともあるかもしれません。音の跳ね返りが強くて耳に心地よくないので、ついつい、ほどほどのタッチで弾いてしまうとか。床がフローリングだと、さらにきつい音が跳ね返ってくることもあります。ちょっと弾いただけで、よく「響いている」つもりになりがちです。そのような人が実際ホールで弾くと、魅力のない音だったりします。
練習室に絨毯を敷く、カーテンを使う、壁に布のタペストリーをかけるなどすると、聴こえてくる音はまったく違ってきます。長い時間自分の音を聴き続けても疲れない、心地よい空間をつくることも、良い音を創るために、気にすべきことかもしれません。
ホールでの経験はとても大事ですが、普段の練習でも常に、自分の音がどのように空間に広がって行っているかに興味を持ち、遠くまで、「想いを伝えられる音」を出すつもりで弾きたいものです。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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