作曲者の思いを感じ、自分の感性を加えて「こんな音にしたい」と考え、それが指を通して音にできるなら、真のテクニックがあるということでしょう。
「こんな風に弾きたい!」と思っても、それがうまく表現できないときがあります。何が原因か?必要なテクニックを使っているか?不足しているのか?
たとえば、その曲にあったテンポで弾けないと、その曲は生き生きとはしません。ゆっくり弾けば余裕があるので間違えをしませんが、テンポを上げると「いい加減」な音になってしまう。そのような時は、そのパッセージを弾きたいテンポで「ドレミ」で言えるか試してみてください。頭でわかっていないものは指に伝えられません。
また、音名はきちんと把握している場合でも、動きにくい指があるために、速く、美しく弾けないこともあります。その場合は弾けていない部分をきちんと繰り返し練習し、テクニックをアップしなくてはなりません。
速く弾こうと思うと「難しい!」という思いが先行して、腕に力が入り、余計弾けなくなったりします。余計な不安があると、力みが入って失敗!ということが多くなります。不安を解決しておくためにも、テクニックや筋力を強くするなど、練習が必要です。
理想高く「素敵な曲にしたい」という思いをもって、進んで努力できるようになると、とても上達が早くなります。「いやいや」練習している時、「やらされている」と思いながら弾いている時などは、時間をかけた割には上達していない事が多いのではないでしょうか?
シューマンのエッセイに「音階や、そのほかの運指法を熱心に練習しなければならない。しかし、成長しても、何時間も機械的な練習をしている人がたくさんいるが、それは、まさに、ABCをできるだけ速く発音しようと骨折っているのとそっくり同じだ。時間をもっと有効に使いなさい」とあります。
現代は19世紀より忙しい時代です。合理的にテクニックアップを図りたいところですが、やはり身につけるのに時間がかかることもあります。やはり「無駄な練習をしない!」のが大事です。
練習初めを「0地点」とします。考えなしに音を出し、ミスしながら練習してしまうと、マイナス方向に1つ進みます。3回良くない練習をしてしまったら、0に戻るのに3回かかります。頭を使わずに同じミスを重ねたり、いい加減な練習をして、マイナスのほうに進んでいませんか?
時間は貴重です。弾きたい音楽や音に向かって、良い練習でプラスのほうばかりに進む練習をし、自分の出している音が素敵だと感じながら、テクニックを付けていって欲しいと思います。
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
トラックバック(0)
トラックバックURL: http://www.piano.or.jp/mt/mt-tb.cgi/8647