トリルは「装飾音」です。センスの良い飾りでないといけません。
たとえば、洋服にきらりと小さく光る飾りがついているのはかっこよいですが、飾りが大き過ぎると、バランスが悪く「ない方がマシ」ということもあります。
ピアノのトリルも同じで、枠に収まりきらないような、遅くて大きな音で入れるとかっこ悪いですね。よく、「自分の弾ける範囲のトリルの量にしましょう」とか「力量に応じて省いても良いです」などと言われます。それももっともですが、やはりかっこよく装飾音を入れて「お洒落な」音楽にしたいものです。
バロックでは、装飾音をいかに入れるかが音楽家としての腕の見せ所だったそうです。当時の鍵盤楽器は音量が加減できない楽器(チェンバロなど)がほとんどでしたから、装飾音で表現を高める必要もあったわけでしょう。
バロックの曲を弾く時は、当時の気分になって装飾音を入れたいものですが、現代のピアノで弾くと、どうしても音量が出てしまい、「ボテッ」とした音になってしまう事が多いです。まだテクニックの乏しい小さい子がどうにか楽しくトリルが学べないか、いつも考えていました。
そんななか、今回偶然の発見をしました!
レッスン015の「弾む」動画を取る際、いつも使っているスポンジのボールを持参し忘れたので、近くの100円ショップで風船を見つけて代用しました。無事動画を撮り終わったあと、風船で遊んでいたときに、今回動画でご紹介する練習方法「風船ピコピコ」を発見!これなら皆、楽しくトリルの練習をするかも!!
レッスンでも試してみました。上手だと速く動いて、見た目にとても面白いです。
生徒さんはその場で必死になってやりこむので、かなり速くなります。
練習嫌いのHちゃんが、この方法を教わった次の日、トリルの練習だけをずっとやったそうです。是非、お試しください!
装飾音は、技術的にはかなり軽いタッチで、軽やかに繰り返される事が必要です。空中で指を動かすならとても簡単に動きますが、鍵盤に触れて練習すると抵抗があるのはもちろん、「速く動かさなくては」という緊張で硬くなって、余計動きが鈍くなります。
風船を指にはさんでいるとき、手が固まっていては風船は動きません。「ピコピコ」と風船が生きているように見せるためには、軽く速く動かす事が必要です。Hちゃんの場合は、風船の動きを見るのが面白くなって練習を続けることになり、随分簡単にトリルが弾けるようになったのです。
ちょっとした偶然から生まれた工夫で、わかりやすく、楽しくマスターできる事もありますよ。
きらりとした素敵なトリルが生まれますように!
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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