100のレッスンポイント

009.弾くことばかりでなく、弾いた後のことを考えよう!

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2010/01/29
♪試してみよう
006でご紹介した「指先に重みを乗せる」感覚の練習と同じ道具をつかって、鍵盤から指を離すまでを練習してみましょう。

さて、打鍵、打鍵といっても、弾く瞬間のことばかり考えているわけではありません。「離鍵」の大切さについてもご紹介しましょう。

ピアノは特に打楽器的で、音の出る瞬間ばかりに気をとられてしまうことが多いですが、「出した音が、どういうふうに空中に飛んでいくか」に心を配ることができると、丁寧な良い音になり、良い音を聴いて幸せになれます!

言い換えると「よく響く音を出したいと思う」ということです。

「響く」ということを小さい子供に教える時に、最もわかりやすいピアノの音は、ペダルを踏んだ時の音だと思います。

ペダルを踏まずに、ペダルを踏んでいるような音が出ることが、「響く」ということ。

響く音を出すために、弾いた後の音を聴く。弾いた後、キーに置いたまま、腕の力を抜きます(脱力)。その後、手首や腕のほうからだんだんに上げていき、最後に指が徐々に上がります。その逆に、指から上げると、ぷつんとした魅力のない乱暴な音が出ますね。
指がキーにあり腕がゆるんだ状態になったときから、音の変化があり、ペダルを踏んだ時のような音、すなわち響きのある音が出てきます。

私の使っているバスティンメソードでは、まず、初めてピアノに向かう時に、グーモーション(じゃんけんの「グー」の形)で、黒鍵を弾き、手首のほうから、ゆっくりと徐々に上げ、音の響きを聴きます。小さいお子さんは、指はまだしっかりしていませんが、このような方法を使うことで、初めて音を出す時から、音の出る行方を聴くことを習慣づけることができます。

「グーモーション」のような方法で「腕と手首と指の一体化を感じること」は、脱力や音を聴くことの練習にもなるようです。音楽大学でも、生徒に脱力を感じさせるために、上記のような教え方をする先生がいらっしゃるようです。

そして次に指先でも同じことが感じられるようにします。

「006、(指先に重みを乗せる)」でもご紹介しましたが、ポリウレタンのぬいぐるみやスポンジを使って、重みをのせた指先をだんだん上げていくという運動(動画参照)は、触れて感じることに加えて、目でスポンジの形が変わるのを確かめられますので、指先の感覚が敏感になります。その動きを、鍵盤の上でも試してみる。丁寧に指先を鍵盤から離すことができれば、響きも感じられると思います。

旋律を弾く際には、特にフレーズの最後を丁寧に聴きましょう。その部分の離鍵に気を配ることができれば、とてもすてきな演奏に近づいていると思います。

また、指離れの悪い時(音どうしがくっついて鳴ってしまう時)も、打鍵より、離鍵に注意を払ってみてください。弱い指が、次の音になっても上がらず残ってしまったり、全体に離鍵がにぶい時があります。弾いた指がどう離れるか意識したり少し離す指を強化してみると良いと思います。

たとえば、中指を打鍵したまま(保持したまま)薬指を何回かしっかり打鍵してみてください。早く打鍵しないと次の打鍵もうまくいかないでしょう。打鍵も離鍵がすばやいと、楽に打ち返せます。もともと弱い指ですが、しばらく繰り返しているとできるようになり、その後、弾きにくく、くっついていた部分は、かなり弾けるようになっていますよ。

ちょっとした意識と繰り返す努力に効果があることを知り、まめに行ってくれると、どなたもぐっと早く上達するに違いないのですが!


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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