Vol.11-2 祝・ピアノ誕生300年 II.ピアノ曲の世界旅行 ドイツ&オーストリア/フランス
ピアノが誕生して以降、西欧のドイツ~オーストリアを中心に、クラシック音楽の重要な一ジャンルとして、「ピアノ曲」の基礎が築かれます。そして時代の変化、各地の民族文化の影響を受けながら、ピアノ曲は多様化し、世界に広がっていきました。
ドイツ&オーストリア/フランス | ロシア/北欧/東欧/南欧 | アメリカ/日本
19世紀後期:ドイツ帝国/オーストリア=ハンガリー帝国
20世紀中期:ドイツ連邦共和国/オーストリア共和国
「ウィーン古典派音楽」とも呼ばれ、クラシック音楽の基本形である「絶対音楽」が整った。貴族の音楽から市民の音楽への移行期。
ハイドン(1732-1809 オーストリア)
「交響曲の父」。動機展開の技法を取り入れ、ソナタ形式を確立。52曲の『ピアノ・ソナタ』を作曲した。
モーツァルト(1756-1791 オーストリア)
ピアノフォルテの音色参照
幼少期から西欧を旅し、多分野で名曲を残した「神童」。個展形式に豊かな情緒を織り交ぜた『ピアノ・ソナタ』『ピアノ協奏曲』。
ベートーヴェン(1770-1827 ドイツ)
ピアノフォルテの音色参照
ウィーン古典派音楽の完成車であり、難聴をもつ不屈の「楽聖」。32曲の『ピアノ・ソナタ』は「ピアノ音楽の新約聖書」。
フランス革命を経て、裕福な市民のための音楽が興隆。絶対音楽の基盤の上に、人間の主観的な感情表現が加えられた。
シューベルト(1797-1828 オーストリア)
「歌曲王」。ピアノ曲『さすらい人幻想曲』は、第2楽章に使われた歌曲(さすらい人)によって全楽章が統一する新手法。
メンデルスゾーン(1809-1847 ドイツ)
抒情的性格曲として、最高度に甘美で感傷的な『無言歌集』等で、"言葉にできない感情"をピアノで描いた。
シューマン(1810-1856 ドイツ)
音の詩人。『謝肉祭』『幻想小曲集』『こどもの情景』等数々の性格的小品に、文学的な発想、幻想的な趣向をちりばめる。
ヨーロッパ各地の独立運動が起こる中、ドイツでは音楽の長大化が進み(ワーグナー、マーラー、ブルックナーなど)、一方で新古典派様式も生まれた。
リスト(1811-1889 ハンガリー)
『ソナタ ロ短調』は、作曲家としての充実期、ワイマールでの作品。リストの元に、保守的ウィーンに対抗する「新ドイツ派」が形成。
ブラームス(1833-1897 ドイツ)
ドイツ音楽の正統的な流れの延長線上に立ち、重厚な構成の中にロマン的な内的心情を表現。『小品集op.116~119』など。
美術、建築、哲学、心理学などあらゆる分野で新しいうんどうが起こり、20世紀の学問・芸術が開拓されていく。「新ウィーン楽派」(シェーンベルク、ベルク、ウェーベルン)は、ウィーン古典音楽と決別し、現代音楽の基礎を作った3人組。「十二音音楽」を確立。
19世紀後期:フランス共和国
ドイツの「絶対音楽」に対し、文学性の高い音楽が求められた時代に、ベルリオーズが「標題交響曲」を作曲。サロンや大衆向けのコンサートが盛んになり、花形ピアニストが活躍。
ショパン(1810-1849 ポーランド)
サロンを中心に活躍。繊細なピアノで、パリの音楽界を虜にした「ピアノの詩人」。祖国ポーランドの舞曲を取入た『マズルカ』『ポロネーズ』など。
リスト(1811-1886 ハンガリー)
ピアニスト時代はヴィルトゥオーソとしてパリの観衆を魅了した「ピアノの魔術師」。パガニーニのヴァイオリンの超絶技巧を原曲とした『ラ・カンパネッラ』など。
普仏戦争(1870年)でドイツに敗北した翌年、フランスの民族運動として、フランス国民音楽協会が設立。フランス近代音楽の基礎が築かれる。
フランク(1822-1890 ベルギー)
オルガニスト兼作曲家。バッハへの傾倒、カトリック的体験から、『プレリュード、フーガと変奏曲』(オルガンの音色参照)などの重厚深遠な作品。
サン=サーンス(1835-1921 フランス)
フランスの神童。ピアノ編曲でも人気の『動物の謝肉祭』など、華麗で軽快、エスプリに満ちた作品を次々に発表。
フォーレ(1845-1924 フランス)
フランス近代音楽を隆盛に導く。パリ音楽院院長としてドビュッシー、ラヴェルを排出。
ドイツではワーグナー、イタリアではヴェルディらの「ロマン派音楽」は爛熟に向かう中、フランスでは、独自の印象主義音楽が開花していく。
ドビュッシー(1862-1918 フランス)
絵画の新技法「印象主義」を音楽に適用。全音音階や平行和音などの独特な音語を形成した。色彩豊かな作風の『映像』など。
サティ(1866-1925 フランス)
フランスの前衛芸術家。『3つのジムノペティ』など奇矯な発想を包み込む音の深みの光芒は、20世紀音楽に多彩な影響を与える。
ラヴェル(1875-1973 フランス)
古典的な形式の中に、印象主義的な和声感。「管弦楽の魔術師」によるピアノの音色の開発。『鏡』『夜のガスパール』など。
これまでのロマン派音楽~印象派音楽を反逆する動きが出てくる。
プーランク(1899-1963 フランス)
第一次世界大戦中から1920年代前半のパリに集い、新古典主義的な新たなフランス音楽を生んだ「フランス6人組」の1人。
メシアン(1908-1992 フランス)
多彩な作品の基盤はカトリック信仰で、インド、インカ、ギリシアなどの旋法やリズムを濃密に組み込んだ『アーメンの幻影』など。