Vol.11-1 祝・ピアノ誕生300年 II.鍵盤楽器の歴史探訪
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鍵盤楽器の祖「オルガン」の誕生は、ピアノよりはるか昔、2000年以上も前に遡り、その形は、水の力でうごく「水オルガン」でした。"鍵盤を付ける"という発想やその配列は、今のピアノが引き継いでいます。音を出す仕組みからみると、打楽器的であるピアノに対し、オルガンは管楽器的。鍵盤を押すことで異なるパイプに空気を流して音が出ます。1つのパイプで1つの音高の音しか出せない代わりに、鍵盤の左右に並ぶ「ストップ」のノブで音色を操作していきます。東京芸術劇場のオルガンは、世界でも珍しく、スタイルの異なる3つのオルガンを、両面に併設。様々な形、長さ、太さのパイプが、なんと9千本!合唱を理想とした「ルネサンス・オルガン」、室内楽的な要素も沢山取り入れられた「バロック・オルガン」、オーケストラ的な「モダン・オルガン」の音色が味わえます。
オルガンが教会での礼拝に関わるようになったのは、10世紀頃。教会の巨大化に伴い、大型のオルガン曲も増え、現在では、多数のコンサートホールに設置されています。
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ショパンやドビュッシー、ブラームスなど、かつてのピアニストはみな、オルガニストでした。昔はオルガンの技法でオルガンを弾いていたのが、時代がくだるとオルガニストとピアニストが一緒になったので、フランクやメンデルスゾーンなど、ピアノの技法を取り入れたオルガン曲が作曲されるようになったのです。
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チェンバロは、歴史的にはピアノより古い楽器です。1500年代から1700年代の終わりまで、ポピュラーな楽器として人々に愛されていました。国や時代によって様々な形があり、英語ではハープシコード、仏語ではクラヴサンと呼ばれます。
小さな爪(プレクトラム)ではじいいて音を出します。強く弾けば強い音が出るわけではないため、物理的な強弱の幅は、ピアノよりも狭いといえるでしょう。しかしその分、「表現の幅を広げる工夫の多彩さ」は、チェンバロの魅力の1つでもあります。例えば、物理的には音はほとんど大きくならなければならないけれど、音の長さや微妙な重ね方によって、クレシェンドの感じを表現していくのです。
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バロックダンスの舞踏譜
バロックダンスとは、国王ルイ14世の時代を中心にフランスで確立され、その後ヨーロッパ中の宮廷へと広まりました。バロックダンスの振り付けは音楽とともに記述され、今も約350種類が舞踏譜として残されています。その振付には、貴族が舞踏会で踊るためのもの(舞踏会用)と、オペラやバレエの中で踊られらプロフェッショナルな作品(劇場用)とがあります。当時、宮廷のダンス教師はみんな音楽家でもあったわけで、そこからもバロック舞曲は実際のダンスの動きと密接な関わるがある、ということが分かります。
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メヌエット「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」より
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パッサカリア「アルミード」より
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1784年ピアノフォルテ・レプリカ 名取孝浩氏所蔵
ハンマーや音量が小さく、鍵盤の深さもモダンピアノの約半分で、全体的に小型だといえます。モーツァルトが活躍していたころは、3人くらいで運んでサロンや貴族の家で弾かれていました。コンセプトもかなり違っていて、現代のピアノは大きなホールで響かせることもできるような迫力や音量、力強さを備えていますが、フォルテピアノは。音量よりも細やかな息づかいや繊細なニュアンスを表現することを得意としています。アクションは現代のピアノよりずっとシンプルでしたが徐々に複雑になり、また音域も拡大しています。
モーツァルトは、ウィーンに移ってからは、ヴァルターが制作した楽器で作曲しているので、この楽器が持つ美学というものが曲の中にも生きています。モーツァルトの楽曲を演奏するとき、現代のピアノではある程度セーブしないとモーツァルトの気品が失われてしまいますが、ヴァルターでは気品を失わずに楽器の100%を使って演奏でsき、それが奏者にとって楽しいところです。安定や性能という面では現代の楽器に軍配が上がると思いますが、性能では測れない、楽器の進歩の中で切り捨てられてきた微妙なニュアンスのようなものが、この楽器の魅力です。
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お話:武田真理先生
今から300年前、バルトロメオ・クリストフォリというイタリアのメディチ家に仕えていた楽器製作者の方が、今まで強弱のつかなかったチェンバロなどの鍵盤楽器に対して、強弱のつく「ピアノ・フォルテ」という楽器を考案されました。その影響を受け、ドイツのジルバーマンが、「フォルテピアノ」の製作を手がけました。ジルバーマンが甥に伝え、そこからツンペをはじめとした優秀な12人の弟子たちが、7年戦争によってロンドンに渡り、そこから、イギリス式アクション、ウィーン指揮アクションという2つの流れで発展していくことになります。
ピアノの歴史は、「戦争」や「市民革命」「産業革命」など、時代の背景にも非常に影響をうけています。そして、作曲家の音楽的な要求も、ピアノの進化に影響しており、たとえば、ベートーヴェンは、この楽器を大きく変えた作曲家のひとりだと思います。そして、ベヒシュタイン、スタインウェイなどが設立された1853年は、近代ピアノの幕開けという重要な年だと私は考えています。
300年の歳月を経て、ピアノというがきは、様々な改良を重ねられ、現在の楽器になりました。当初のクリストフォリのピアノと現代のピアノでは大きく変わってきたのが、テクニックだと思います。フォルテピアノから現代のピアノになるという過程で、ピアノという楽器は、どんどん改良され、より強く、より遠くまで響く楽器となり、ピアノ曲も技術的にも難易度が増し、音量も ppp ・・・から fff ・・・まで、表現の幅もものすごく広くなってきたわけです。
そういった300年の亜由美を身近なものにして、現代のピアノになった経緯、それに伴って作曲家の作品が変わってきた経緯、タッチが変わってきた経緯などを感じ取ってほしいと思います。
![]() ピアノ300年記念コンサートで使用のグランドピアノ。世界のコンサートホールで、もっとも多く使用されている伝統的なピアノ。 |
![]() 1世紀以上培ってきたピアノづくりの技術と、最新のデジタル技術を融合して作り上げた新しいピアノ。現代の様々な制約の中でも「本物のグランドピアノ体験」を可能にしている。 |
![]() 世界で唯一の「宝石のような輝きを放つ」グランドピアノ。ピアノにかつてない異次元の美しさと価値をもたらしたカワイの芸術作品。 |
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