ピアノステージ

Vol.09-5 ステージ探訪(1)地域創造「音活」のステージ

2009/03/19
地域創造「音活」のステージ

昨年大阪と和歌山のホールで企画実施された、2つの「音活」をご紹介。「音活」とは、財団法人地域創造が実施する「公共ホール音楽活性化事業」の登録アーティストが、数日間派遣先の地域に滞在し、公共ホールでのコンサートや、アウトリーチコンサートやワークショップなどの地域交流を行うというもの。ピアニストの今野尚美さんと藤井隆史さん&白水芳枝さんにお話を伺った。(文・構成:霜鳥 美和)

音活レポート(1)大阪・富田林市(今野尚美さん) | 音活レポート(2)和歌山市(ピアノデュオ・ドゥオール)

音活レポート(1)

今野尚美さん 大阪・冨田林市/今野 尚美さん
[日程] 2008年9月19日(金)~21日(日) [場所] 大阪府富田林市
[アーティスト] 今野尚美
[ホール担当者] 辻野文崇氏(すばるホール事業部)
[コーディネーター] 能祖将夫氏(北九州芸術劇場プロデューサー、桜美林大学准教授)
Artist Interview────────
9月21日
9月21日(日)ピアノ・リサイタル「ピアノ・ルネサンス」
プラネタリウムの月の映像をバックに、ベートーヴェンの月光やドビュッシーの月の光などを演奏。
バロックから近現代まで音楽の歴史をたどりながら、楽器の歴史や作曲家のお話もまじえて演奏しました。

音活アーティストに応募した経緯は?
「結婚、出産とかいろいろしているうちに、すっかり忘れてしまっていたのですが、10年前にもこのオーディションを受けていたんです(笑)。当時ロンドンから帰国したばかりで、初めて住む東京で、何を足がかりに生きていけばよいかわからなくて・・・。ある日雑誌を見て「あれ、こんなの募集してる」と。10年前もきっと同じ事を考えていたのでしょうね。ロンドン留学中も含め、自分なりに個人的な関係の方やお友達の縁で、学校や幼稚園を訪れたり病院を回ったり、自分の中で自然にやってきたことでした。から教会や病院や美術館など、コンサートホール以外の場所で聴衆とコミュニケーションをとりながら弾かせていただくことは、ごく自然なことでした。今回はご縁をいただき、このような活動の仕組みや狙いが整理され、改めて理解することができたように思います。」

大阪での音活を終えた感想は?

「ホール担当者の方が大変ピアノが好きな方で、その熱い思いにお応えしたくて、最大限の可能性を考えて努力したいと思いました。そして、「演劇」がご専門のコーディネーターさんのアイデアが加わり、俯瞰的にプロデュースして下さって大変ありがたかったです。例えば、絵本を朗読していただき、私がそれに即興で音楽をつけたり、詩と音楽のコラボレーションをしたり。また、アシスタントの方がトランペットができるということで、朗読の中の効果音としてトランペットを鳴らしてもらったり。そんな感じでみんなを巻き込んで、本番直前まで「ああでもない、こうでもない・・・」と練って、携わって下さる方々と聴いて下さるお客様との一期一会の音楽のひとときを大切に、様々な要素が融合した楽しいステージを作ることができました。」

9月20日
9月20日(土)
ピアノ・ミニコンサート「親子のための星空音楽会」

プラネタリウムの星空と絵本を眺めながら、耳なじみの名曲星や月にまつわる曲を演奏したり、宇宙の映像にや即興でピアノ演奏をつけたり、乳幼児のいらっしゃる親子にお届けしました。
9月20日
9月20日(土)
ピアノクリニック「ピアニストのエッセンス」

小学生高学年の4人と高校生の1人が受講。日常のレッスンにもつながる刺激的なお話がいっぱい。大きなピアノと大きなホールの響きを使った贅沢な環境のレッスンでした。

今野 尚美 プロフィール

こんのなおみ◎4歳よりヤマハ音楽教室でピアノと作曲を学び、中学、高校生の頃、ヤマハジュニアオリジナルコンサートにおける雨リマ、カナダ、ベルギーなどのコンサート ツアーに参加、自作のピアノ協奏曲を国内外のオーケストラと共演。18歳より英国王立音楽院に留学。ピアノをアレキサンダー・ケリー、ヘイミッシュ・ミル ン、ジョセフ・サイガーの各氏に、室内楽をマイケル・デュセック、ジェフリー・ブラットリーの各氏に師事。首席卒業後、同音楽院大学院に進みディプロマを 得て卒業。在学中、数々の学内コンクールに優勝およびに入賞。イタリア・シエナキジアナ音楽院夏季セミナー室内楽部門でディプロマ名誉賞・特別賞を受賞。 また留学中オランダ・ミュージックセッションやハンガリー(ケシュタイ)マスタークラスなどでも研鑚を積み、イギリス国内での演奏活動に加えてアイルラン ド、スコットランド、イタリア、オランダ、スペイン、イスラエル、クロアチアなど様々な国々でソロや室内楽の演奏を行う。1992年イタリア・パロマドー ロ国際室内楽コンクールにて最高位、ならびに新曲最優秀賞受賞。1994年ソリストに選ばれ、ロイヤルアカデミー・シンフォニエッタと共にロンドンと東京 にてモーツァルトのピアノ協奏曲を共演。1995年イギリス・へイヴァーヒル・ソリストコンクールで2位入賞。1996年イギリスにてイングリッシユ・シ ンフォニア、ヘイヴァーヒル・シンフォニアと共演。

音活レポート(2)

藤井隆史&白水芳枝 和歌山市/ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)
[アーティスト]  ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)
[ホール担当者]  谷奥雅伸氏、川島博文氏(和歌山市民会館)
[コーディネーター]  楠瀬寿賀子氏(津田ホールプロデューサー)
[日程] 2008年12月19日(金)~21日(日) [場所] 和歌山県和歌山市
Artist Interview────────
12月19日
12月19日(金)
和歌山市立城北小学校でのアウトリーチ。

内部奏法を用いた現代作品(G.クラム:白鳥座ベータ星)を演奏する前に、ピアノという楽器の仕組み、内部奏法とはどのようなことかを、ピアノの周りに集まってもらい説明しました。
音活アーティストに応募した経緯は?

「ドイツ留学から帰国する前から、この『音活アーティスト』を、結構狙っていたんです(笑)。日本では、こういう活動があるんだと、インターネットで知りまして。『地域創造』という名称といい、まさに僕たちのイメージする地域活動だと思いました。ドイツ滞在中も、コンサートホールだけでなく、老人ホームやロータリークラブのイベントなどで演奏する機会があったのですが、その中で、お客さんやいろいろな人との関わりなど、全部をひっくるめて『演奏会』だと思うようになりました。ホールから出て行って、自分達がアーティストとして活動するということにも興味がありましたし、ホールで演奏会をするために、公共の場でまずプロモーションという演奏をしていくという活動にもとても興味がありました。地域創造の活動に関われて、とてもよかったと思っています。」

和歌山での音活を終えた感想は?

「この事業の素晴らしいところは、演奏家にとってのホームであるホールでのリサイタルが予定された上に、演奏家の想いがよりダイレクトに伝わる、学校や施設での3?40人規模でのアウトリーチ活動が重んじられる事です。通常の音楽鑑賞会に留まらず、皆に参加してもらい、一緒に授業と音楽を作り、繋がっていくこの活動。私達、会館の方、東京からの数人のスタッフも半年前から互いの欲求を知り、意見交換し、勉強していきますので、その一体感は今までになく熱いもので、ホスピタリティも完璧!心から感謝しています。ホールで音楽を座って聴くことも大事ですが、アウトリーチでは楽器に触れ、どのように演奏しているか近くで見て、私達の演奏から感じたものを、色、言葉で表し、手や足(リズム打ち)で音楽を体感する。そんな機会を子供達やご老人方は素直に感激してくれた様ですし、スタッフの方々、何より私達おんかつアーティスト(音楽活性化事業登録アーティスト)が音楽によって活性化された時間でした。
私達は、出向いた土地に留まることはできませんが、私達の演奏をきっかけに会館と地域の方々、音楽団体等が交流し、音楽によってその地域が活き活きとしていくのであれば、こんなに嬉しい事はありません。 」

12月19日
12月19日(金) 
和歌山県盲学校でのアウトリーチ

音を肌で波動として感じ、今まで経験したことや感情と重ねて音楽を聴くという意見に、はっとさせられました。「聴いているだけで二人がとても仲がよいのがよくわかる!」なんてコメントも。
12月21日
12月21日(日) 
「ドゥオール X'mas Special Concert 2008」

作曲家の国、時代などを、ソロ、内部奏法、4手連弾、2台ピアノというピアノ最大限の可能性で紡ぎながら、照明による演出も加え、音楽の大旅行をしていただきました。

ピアノ・デュオ ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)プロフィール

ふじいたかし◎東京藝術大学付属音楽高校、同大学、同大学院修了。現在、東京藝術大学音楽学部非常勤講師。
しらみずよしえ◎兵庫県立西宮高校音楽科、東京藝術大学卒業。
共 にドイツ・マンハイム音楽大学大学院演奏家課程(ソロ)、ピアノデュオ科最優秀修了。文化庁、野村国際文化財団、DAAD各奨学生。各々ソリストとして数 多くの国際コンクール入賞、ソロリサイタルやオーケストラとの共演などヨーロッパ、日本にて活動を行う。2004年ピアノデュオを結成。ロンドン、シュー ベルト、C.トーニ、M.ドラノフ、"競楽VII"など国際コンクールに入賞。2006年度青山財団バロックザール賞受賞。2005年よりドイツ、ス ウェーデン、チェコ、アメリカ、日本の各地にてピアノデュオリサイタルを開催。特に日本では全国各地から招きを受け、ピアノデュオを専門とした活発な演奏 活動(リサイタル、NHK他放送出演、講座、アウトリーチ活動)を展開。その演奏は世界各地の新聞各紙でも高い評価を受け、各方面から注目を集めている。 また、84.2MHz FM西東京「ドゥオールのクラリフェ・クラシコ」(毎月第3土曜日23:30-24:00)パーソナリティを務める。大阪AIS及び2008、09年度公 共ホール音楽活性化事業 登録アーティスト。ホームページ:http://www.yoshie-takashi.com
「公共ホール音楽活性化事業」(=音活)とは
財団法人地域創造が主催する事業で、地域においてクラシック音楽を身近なものとするため、オーディションで選考された新進演奏家を公共ホールに派遣し、地域の公共ホールと共同企画により「コンサート」と様々な「アクティビティ」(地域交流プログラム)を行っている。昨年度10年目の段階で、実施したホール数は200件。また、企画から公演に至る過程において、企画・制作能力を高めるための研修機会を提供することで、地域の公共ホールスタッフの育成、地域文化の活性化を図っている。

Vol.9 INDEX


2009年1月31日発行
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親が変われば、子どもも変わる~「親学」のすすめ
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ステージ探訪(1)
地域創造「音活」のステージ
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ピティナ編集部
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