わくわくポピュラーガイド

第25回 松本あすかさん

2013/08/08
課題曲アドバイス
展開2
ピアノ協奏曲第2番第1楽章 ~Fox Chase~
ラフマニノフ(松本あすか編曲)
出典:松本あすか PIANO ESPRESSIVOⅠ(株式会社プリズム)より
この曲のように音数が多い場合、音を発音していないときこそ、グルーブにしっかりのっていくことが大事です。最初はテンポを落として、休符やタイをしっかり保つように。タイの後の音が短くならないように、ちゃんと耳で聞くことです。音を埋めて弾くことにだけ集中すると、テンポがどんどん走っていくので注意してください。
譜例 【譜例:クリックで拡大】
展開1
エリーゼのために ~ROSSO~
ベートーヴェン(松本あすか編曲)
出典:松本あすか PIANO ESPRESSIVOⅠ(株式会社プリズム)より
[C]の切り替えがポイントです。拍子は変わるけどテンポは変わりません。グルーブが変わる、周期だけが変わるということです。全体的に、それぞれのセクションが持っているリズムパターン、つまり左手を意識して弾くと、リズムにノッて弾きやすいと思います。
♪楽譜・CDの紹介♪
楽譜
松本あすか
アーティストスコアブック
PIANO ESPRESSIVO Ⅰ・Ⅱ
楽譜
■¥2,800
■(株)プリズム
CD
PIANO ESPRESSIVO Ⅰ
PIANO ESPRESSIVO Ⅱ
CD1
■¥3,000(税込)
■(株)キングレコード
CD
piaNA plays Kapustin
CD2
■¥1,980(税込)
■(株)フライングペンギンズ
■ピアノデュオpiaNA(西本夏生、松本あすか)によるオールカプースチンナンバー。
連載第25回は、進化し続ける新世代ピアニスト、松本あすかさんにお越しいただきました!
松本あすか
松本 あすかさん
(ピアニスト、音楽教育家)

まつもとあすか◎ピティナA1級金賞(6歳)。プレミオモーツァルト国際コンクール最年少第3位及びプレミオモーツァルト賞受賞(7歳)。日本クラシック音コン中学校の部第2位(15歳)。カール・ツェルニー国際コンクール(プラハ)第3位(16歳)。ビティナコンチェルト部門最優秀賞。18歳で、より広く音楽を勉強するためクラシック以外の勉強を始める。23歳の時、再度クラシックに戻り、ピティナグランミューズA1カテゴリーにて第1位を受賞。クラシック音楽にグルーヴ感を吹き込むその演奏スタイルで、ジャンルを越え活動中。POPSサポート出演などの他、指導者としても全国各地で活動。キングレコードよりアルバム2枚発売中。ピティナ正会員。
今年から始めた 「武道」に夢中!
─ 幼少の頃は、クラシックピアノから入られたのですか?

3歳から18歳まではクラシックピアノオンリーで、2つ上の姉と共に、いわゆる"ピアニストを目指す子ども"の典型的なパターンでしたね。一日の練習時間も半端ではなかったので、友達と遊ぶ時間がないのが子ども心には辛かったです。

─ その後、一度ピアノから離れたと聞きましたが...

それまでは「将来はピアニスト」と何の迷いもなく思っていたのですが、高3で進路を決める時期に「私はホントに自分の意志でピアノの道を選んでいるんだろうか」とふと疑問を感じました。
「自分の責任で自分の道を選びたい」と思い、「一旦リセットしよう」「ピアノをやめよう」と、伊豆大島に短期家出をしたんです。でも、やめると思いながらも、習慣で楽譜だけは持っていったんですね(笑)。結局、逃避行のはずが、頼まれて島の小学校でコンサートを行うことになり、子どもたちが純粋に音楽に反応してくれるのを見て大いに教えられました。もっと純粋に音楽と向き合えばいいんだと気付き、2週間であっけなく家出は終わったのですが、クラシック以外の音楽も勉強してみたいと思い、音楽専門学校に入学しました。

─ そこで国府弘子さんなど、蒼々たる教授陣に教われたのは幸運でしたね。どんな授業だったのですか?

初回の授業では、まず自己紹介がてら得意曲を弾かされた後に、「きょうは簡単なアドリブをやって終わりにしましょう」と先生が言われました。さっきはショパンをバリバリ弾けたのに、「好きに弾けばいいのよ」と言われた途端にそれこそ「ド」を連打するくらいしかできなくて...そのときから、私の音楽人生第2章がスタートしたといえます。

─ その苦境をどうやって乗り越えたのでしょうか?

その後の2年間は地獄!(笑)コンプレックスの塊でしかなかったですね。殆どの人が脱落していく授業に、ついていくのに必死でした。今思えば、出合った環境や人が私を作ってくれたと思います。友人がいろいろ勧めてくれたCDなども、流し込むようにたくさん聴きましたね。そして、その在学2年間に加え、卒業後の現場で更に鍛えられました。

─ その後に、クラシックに戻るきっかけが、カプースチンだったのですね?

はい。その頃流行りはじめたカプースチンにすっかりハマり、譜面を見て弾く、クラシックの世界に戻りました。まずバッハのインべンションあたりから感覚を戻したのですが、ポップスと違って弾く音が決まっているのが面白くて、ものすごく計算された美しさも感じられました。以前は与えられるだけだった譜面が、一度ポップスを経験したことにより、見方が劇的に変わったんですね。
逆にポップスの見方(譜面を元に自分で装飾する)で、クラシックの譜面を見たらどうなるか、という試みで誕生したのが、「インヴェンション第1番」(ミュッセ刊)なんです。

─ そうでしたか。あすかさんの楽譜は、どの曲も見やすい!弾く気になる!と評判ですよ。

それはものすごく嬉しいです!元々クラシックの世界にいたので、ポップス調の曲に憧れる人の気持ちや、楽譜がないから弾けないというジレンマもよくわかるんです。「弾いてみたい」⇒「楽譜があったらな」⇒「あった!」⇒「これなら弾けるかも」と思っていただけるよう、目から血が出るっ(笑)てくらい浄書もがんばりました。

─ 今春開催されたピティナ提携コンクールの「TOKYO FMピアノ・ポピュラーコンクール 」では、ステップ課題曲でもあるあすかさん編曲のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」を演奏したお二人が、第1・2位となりましたね。ぜひアドバイスをお願いします。(囲み参照)
─ 最後に今後の抱負をお聞かせください。

自分が今、リアルタイムに学び続けていること、気付いてきたことが、今悩んでいる方の何かヒントになればと思います。やらされて弾くのではなく、音楽そのものがむちゃくちゃ面白いんだよ、いろんなことが出来るんだよ、ということを伝えたいですね。それがわかれば、子どもたちも自発的に取り組むと思うんです。

─ あすかさんの楽しい発想は、ムジカノーヴァの「譜読みの島」連載や、鍵盤ハーモニカを使ったコンサートなどにも溢れていますね。今後のご活躍にも期待しております。本日はありがとうございました。
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ピティナ編集部
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