第25回 松本あすかさん
ラフマニノフ(松本あすか編曲)
【譜例:クリックで拡大】
ベートーヴェン(松本あすか編曲)
アーティストスコアブック
PIANO ESPRESSIVO Ⅰ・Ⅱ
■(株)プリズム
PIANO ESPRESSIVO Ⅱ
■(株)キングレコード
■(株)フライングペンギンズ
■ピアノデュオpiaNA(西本夏生、松本あすか)によるオールカプースチンナンバー。
(ピアニスト、音楽教育家)
3歳から18歳まではクラシックピアノオンリーで、2つ上の姉と共に、いわゆる"ピアニストを目指す子ども"の典型的なパターンでしたね。一日の練習時間も半端ではなかったので、友達と遊ぶ時間がないのが子ども心には辛かったです。
それまでは「将来はピアニスト」と何の迷いもなく思っていたのですが、高3で進路を決める時期に「私はホントに自分の意志でピアノの道を選んでいるんだろうか」とふと疑問を感じました。
「自分の責任で自分の道を選びたい」と思い、「一旦リセットしよう」「ピアノをやめよう」と、伊豆大島に短期家出をしたんです。でも、やめると思いながらも、習慣で楽譜だけは持っていったんですね(笑)。結局、逃避行のはずが、頼まれて島の小学校でコンサートを行うことになり、子どもたちが純粋に音楽に反応してくれるのを見て大いに教えられました。もっと純粋に音楽と向き合えばいいんだと気付き、2週間であっけなく家出は終わったのですが、クラシック以外の音楽も勉強してみたいと思い、音楽専門学校に入学しました。
初回の授業では、まず自己紹介がてら得意曲を弾かされた後に、「きょうは簡単なアドリブをやって終わりにしましょう」と先生が言われました。さっきはショパンをバリバリ弾けたのに、「好きに弾けばいいのよ」と言われた途端にそれこそ「ド」を連打するくらいしかできなくて...そのときから、私の音楽人生第2章がスタートしたといえます。
その後の2年間は地獄!(笑)コンプレックスの塊でしかなかったですね。殆どの人が脱落していく授業に、ついていくのに必死でした。今思えば、出合った環境や人が私を作ってくれたと思います。友人がいろいろ勧めてくれたCDなども、流し込むようにたくさん聴きましたね。そして、その在学2年間に加え、卒業後の現場で更に鍛えられました。
はい。その頃流行りはじめたカプースチンにすっかりハマり、譜面を見て弾く、クラシックの世界に戻りました。まずバッハのインべンションあたりから感覚を戻したのですが、ポップスと違って弾く音が決まっているのが面白くて、ものすごく計算された美しさも感じられました。以前は与えられるだけだった譜面が、一度ポップスを経験したことにより、見方が劇的に変わったんですね。
逆にポップスの見方(譜面を元に自分で装飾する)で、クラシックの譜面を見たらどうなるか、という試みで誕生したのが、「インヴェンション第1番」(ミュッセ刊)なんです。
それはものすごく嬉しいです!元々クラシックの世界にいたので、ポップス調の曲に憧れる人の気持ちや、楽譜がないから弾けないというジレンマもよくわかるんです。「弾いてみたい」⇒「楽譜があったらな」⇒「あった!」⇒「これなら弾けるかも」と思っていただけるよう、目から血が出るっ(笑)てくらい浄書もがんばりました。
自分が今、リアルタイムに学び続けていること、気付いてきたことが、今悩んでいる方の何かヒントになればと思います。やらされて弾くのではなく、音楽そのものがむちゃくちゃ面白いんだよ、いろんなことが出来るんだよ、ということを伝えたいですね。それがわかれば、子どもたちも自発的に取り組むと思うんです。