みー子さんのピアノアレコレ

第05回 「アンサンブルで人と合わせるってどういうこと?」

2009/06/30
ねーねーミー子ちゃん、来週のクラスのお楽しみ会、何やるか決めた?
うん、うちの班、二人ずつに分かれて出し物しようって。みー子は、シゲっちとピアノとリコーダーで合奏やるよ。
え、シゲっちと?!うっそー、よかったね、みー子ちゃん!
ん?んふふ。ま、まぁね。ま、シゲっちはきっとみー子の思ったとおりの人だって、きっとわかるハズ。楽しみ。
うっわー楽しみだね。がんばってぇ
うん。じゃ、今から初めての練習あるから。チャオ!
-そして放課後の音楽室-
じゃ、みー子ちゃん、よろしく。曲は「グリーングリーン」。
オッケー!じゃ、いくよ!
(あれ、なんか、弾きにく~い! ・・・リズムも合ってないし・・・)(なんで、そこ、遅くなるの? ・・・あ、また音違うし・・・)
ちょ、ちょっとぉ!!ぜんぜん合ってないじゃん!ちゃんと練習してきたぁ?!
えっ?う、うん。ちゃんとやってるよ。合ってないかなぁ。
「かなぁ」じゃないよ!メチャクチャじゃない!なんでそこのレドレドのとこいつも遅くなんの?それにサビのミ、ドのとこ、いつも音ひっくりかえるじゃん!なにやってんの?!
な、なにって・・・オレだって、ちゃんと一生懸命吹いてるよ!なのにみー子ちゃんがどんどん行っちゃうんじゃないか!
「どんどん行っちゃう~」なんて、だらしないわねぇ!しっかりしてよ!あ~なんか、がっかり。もぉこんなんじゃ、ハジかいちゃうよ。
そんな言い方ないだろ!?そっちこそ自分のペースばっかで、なんだよ!こんなんじゃ練習なんないよ。オレ、今日は帰るから!
えっ、えええ!ちょっと、どすんの??
みー子帰宅
た、ただいまぁ・・・もうだめ。立ち直れない。
やぁおかえり!あれれ、今日はだいぶキちゃってるねぇ。大丈夫かい?どうしたの?
あのね、例の合奏、みー子、シゲっちに期待しすぎちゃって、ついキツく言い過ぎちゃったの。どうしよう。
そっかぁ。いったいどうしてそうなっちゃったの??
だってさぁ、シゲっちったら、リズムがぜんぜん正しくないし、途中でノロノロするんだもん!ぜんぜんピッタリ合わないんだよ!
ピッタリねぇ・・・。みー子さんはピッタリ合わせたかったの?
そりゃそーだよ!だってアンサンブルだもん。ピッタリ合ってれば、かっこよく決まるし、それにまるで、二人の相性もいいみたいじゃん?
ううん・・・みー子さん、ピッタリバッチリ合ってるからといって、それがいいアンサンブルとは限らないんだよ。
はぁ??
みー子さんが、お友達と仲良く歩いてるところを想像してみて。気持ちよくお散歩してる時、どんな風に歩く?
う~ん。なんとなく一緒に並んで歩くかなぁ。
そうだよね。仲良しだからって、「右、左、右、左、ぜんた~い止まれっ!」なんて、やらないよね。
う、うん。それじゃ兵隊さんみたいだね。
そうだね。「正しく」歩いても、楽しい散歩にはならない。アンサンブルも同じで、歩き方を一緒に作っていくことがヒケツだよ。
「正しさ」よりも、「一緒に作る」こと?
そう。みー子さんも一度、シゲっちのリコーダーのパート、ちゃんと吹いてみるといいよ。
え、なんで?みー子ピアノなのに?
そう。ピアノは鍵盤を押せば音が出る。でも、リコーダーは、吹いて音を出す楽器だよね。さぁ、何がちがってくる?
ええと・・・あっ、リコーダーはちょっと苦しくなるね。息吸わないと。
その通り。だからね、リコーダーの人は、息つぎしないといけない。ピアノは苦しくないからって、さっさと行っちゃったら、一緒に歩けないよね。
そーねそーね。
合わせるっていうのは、相手の呼吸に寄りそってあげること。そしてこっちのやりたいことも、上手に相手に伝えることだよ。
寄りそったり、伝えたり・・・ねぇ。
散歩も「雨だよ、急ごう」とか「見て、お花きれい」とかお互いに伝え合えば、一緒に走り出したり、立ち止まったりできるよね。アンサンブルも一緒だね。
わかった。じゃあ、みー子もシゲっちのパート、リコーダーでやってみる。で、笛ならどこが大変かとか、考えてからピアノ弾けばいいんだね!。
そうだよ!そうするとうまく寄りそうことができて、アンサンブルが素敵になるし、何しろ楽しくなるよ。息が合うって、そういうこと。
・・・ぽっ
実はこういうアンサンブルは、みー子さんが一人でピアノを弾くのにも、大切なことを教えてくれるんだ。
え、一人なら全部自分で決められるのに?
うん。右手と左手はべつべつに弾いてるでしょ?これは一人でアンサンブルしてるのと同じ。両方の手が、どんなことをやってるのか、ちゃんと意識できるようになるよね。
そっか。なんとなくいっぺんに弾くんじゃないってことだね。
それにね、アンサンブルで人と合わせることができれば、ソロのときはお客さんに自分の音楽を伝えられるようになるよ。
そうなの?!じゃ、もっといっぱいアンサンブルやりたいな!
身近な楽器でいいんだよ。鍵盤ハーモニカなんかもいいね。合奏だからって、何もオーケストラとか、連弾の楽譜がきゃって構えなくても大丈夫。
そっかぁ!みんなが持ってる楽器でできるね。一つの曲を右手と左手で分かれて弾いてもアンサンブルだ。
さっそくいろいろ試してみてね。まずはシゲっちと仲良くやってみて!
今回の隠れキーマン先生
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取材・絵と文:飯田有抄

プロフィール:音楽ライター、翻訳家。1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科修士課程修了。マッコーリー大学院翻訳通訳修了。ピティナ「みんなのブルグミュラー」連載中。

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