みー子さんのピアノアレコレ

第01回 「ピアノでお友だちに負けたくない!このキモチ、どうしたらいい??」

2008/06/24
みー子ちゃん!!!みー子っ!!
はぁい、ママ。なぁに?
なぁに?じゃないわよ、みー子。
あなた今日、ピアノのお稽古はちゃんとしたの?
ん?・・・まだよ、ママ。今やろうと思ってたとこー
今今って・・・いっつもそうじゃないの。
そんなことじゃあ、ちっともじょうたつしないのよ!!
わっかってるわよぉ???もぉ???
この子ったらもう・・・ お隣のまさおくん、毎日2時間もお稽古なさるそうよ!みー子も少しは見習いなさい!!
えええ、まさお?いいよぉ、あんなヤツ。となりのクラスだし、合唱の伴奏はみー子がやるもん。
そぉいうことじゃないでしょ??まさおくん、もうブルグミュラーは終って、なんでも次の発表会ではシューベルトの即興曲弾くそうよ!
ええー?いいよ、男子なんてかんけーないって!それよりみー子、今すっごい「人形の夢と目覚め」にハマってんの。
じゃ、みー子、遊び行って来る!お稽古、あとでやるよっ
もう・・・みー子ったら・・ もう少し意欲的になって、大曲に挑戦するとか上を目指してくれたらいいのだけれど・・・

ラララン♪ラララン♪ラ・ラ・ラァ?ン♪
お向かいのふさ子んちで、これ右手と左手でふたりでわかれてひくんだ?
いよっ!みー子じゃんか!
あっ、まさおっ
ピースなんか持ってどこ行くんだよ。またふさ子んちかぁ?
ぅへっ!!おまえ、まだこんな曲、やってんの?!
こっ、こんな曲とは何よっ!いい曲よ!みー子好きだもんっ それに、あんたにカンケーないでしょ?!
へ。べっつに?カンケーないけどさー オレ、こんどシューベルトのアムプロムチュ、やんだよねぇ。ふよみとか、すっげーたいへーん
あっそ! それがどーしたの?! どいてよ。ふさ子んち、いくんだから!
おっと、しっけ?ぃ そうそう、お前、まだブルグミュラー、「子供の集会」やってんだって?!?! へへ!!おっせーな!!
お・・・おそい・・・ですって・・・?!

ただいまぁ・・・みー子ピアノ練習する。 まさおに負けたくないんだもん!
あら、遊びに行ったんじゃなかったの??練習がんばるのはいいけれど・・・ ちょっと様子がヘンだわねぇ・・・
?ガツガツ指の練習をするみー子?
イテテテテ!!!みー子さん、さっきから今日はタッチが乱暴だよ!一体どうしたんだい?
あ、キーマン先生!!みー子負けてらんないの!まさおに「おそい」とか言われちゃってさ、くやしいの!みー子もシュベルトのアンパンチューやる!!キーマン先生、おしえてよ!
それを言うならシューベルトのアムプロムチュでしょ?・・・でもそんな大きな曲、少し早いんじゃないかな。だいいち、その曲知ってるの?
し、知らないわよ!でもやるったらやる!!まさおにギャフンと言わせてやるんだから!それに、おっきい曲ひけたらカッコいーじゃん!
ふう。ちょっとまってね、みー子さん。ピアノを弾くのに誰かを負かしてやるー!とかカッコつけちゃえー!とかは、ちょっとちがうんじゃないかなぁ。
えー。だってぇ。
あせって誰かの真似をしても、みー子さんが本当にうまくなれるワケじゃないよ。
じゃあみー子どうしたらいいの?みー子だって、うまくなりたいもん!
うまくなりたいならね、誰かに勝とうとすることじゃなくて、みー子さんの「あこがれの曲」を思い出してごらん。
え?あこがれの曲??なんだっけ。
みー子さん、このまえ発表会で、5年生のタマ子さんが弾いた曲をきいて、感動した?!って言ってなかった?
うん!アレすごかった!「エリーゼのために」っていうんだよ!タマちゃんステキだったぁ・・・。でも、むずかしそうなのぉ。
その「エリーゼのために」、みー子さんだってタマ子さんみたいに弾けるかもしれないよ。
えっほんと?!?!
本当さ。だってみー子さんはその曲に、とってもあこがれてるよね。いちばん大切なのは、その心。音楽に感動することなんだ。
え?でも、どんなに感動しても、弾けるわけじゃないよ。
たしかにね。でも大好きな曲があるってことは、その曲を弾けるようになりたいから、練習をがんばれるってことだよね。そして練習は、ていねいにゆっくりやればいいんだよ。
たしかにね。でも大好きな曲があるってことは、その曲を弾けるようになりたいから、練習をがんばれるってことだよね。そして練習は、ていねいにゆっくりやればいいんだよ。
そうじゃないんだよ。「いそがばまわれ」って言うでしょ?ひつようなことを、ていねいにやることが、実はいちばんの早道なんだ。
「いそがばまわれ」・・・か。みー子、早くうまくなるために、ゆっくりやるのか・・・。
そうだよ。赤ちゃんはいきなり固いおせんべいは食べられないけど、やわらかいものからゆっくり食べさせてあげれば、なんでもじぶんで食べられるようになる。ピアノもそれと同じなんだよ。
ゆっくりちゃんとやれば、みー子、そのうちなんでもじぶんで弾けるようになれるの?
そうだよ。そのために今はみー子さんにとって必要なことをちゃんとやろう!だからね、だれがどんな曲を弾いていようと、そんなことはぜんぜん関係ないんだよ。
う?ん、そっか。なんとなくわかってきたかも!あせっちゃダメだね。みー子、「エリーゼのために」だったら誰よりもステキに弾けるピアニストになりたいな!
その調子だよ♪みー子さんなら、ぜったいにそうなれる。大好きな曲へのあこがれを、大切にしようね!
今回の隠れキーマン先生
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取材・絵と文:飯田有抄

プロフィール:音楽ライター、翻訳家。1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒、同大学院音楽研究科修士課程修了。マッコーリー大学院翻訳通訳修了。ピティナ「みんなのブルグミュラー」連載中。

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