レッスン室拝見

第10回 柳下加奈ピアノ教室

2003/07/01
《INDEX》
1.夢だった自宅でのレッスン2.自宅で大人のアンサンブルレッスンが実現3.「夢の1曲」までの道のり


1.夢だった自宅マンションでのレッスン


防音室を背にして。5畳弱の空間ながら、狭さは全く感じさせない。それはこの光の効果。「音響も満足しています」。

─ 4年前にお引越しされたそうですが、その前はご自宅でレッスンされていなかったそうですね。どのようにレッスン環境を整え、どのようなレッスンをしようとお考えでしたか。

柳下:引越し前はワンルームマンションでピアノが置けませんでした。ピアノは実家にありましたが、レッスンは専ら近所の楽器店でしておりました。ですから自宅でのレッスンは夢でしたね。実際引っ越す段階になって、どの防音室を入れようか迷いましたが、ヤマハアビテックスを使っていた先生にフリータイプが良いと勧められ、また私もそのクオリティを確信していたので決めました。
もともとソロだけではなく、アンサンブルレッスンに興味があったのですが、このフリータイプであれば隣のリビングルームまで使ってサロンコンサートもできますし、理想的です。

─ レッスン室は5畳程ということですが、それほど狭くはみえません。どのような工夫をされたのでしょうか。


手前のリビングルームとの仕切りは、白の二重サッシ。軽い色合いのお陰で重苦しさを感じない。防音室内は3方面にサッシがあるが、「開放感」は柳下先生がこだわったポイントだ。

柳下:防音室の場所についてはかなり迷いましたね。初めは北側の1室に設置を考えていたのですが、ピアノをあまり奥に引っ込めてしまいたくないと考え直し、結局南側角部屋の和室に入れることに決めました。当初和室は6畳あったのですが、ヤマハアビテックスフリータイプを入れて約4.9畳のレッスン室に致しました。今はそこにグランドピアノ1台、クラビノーバ1台、キーボードを1台ずつ置いています。

─ この防音室で特にこだわった点を教えて頂けますか。また3面ガラスですが、音響はいかがでしょうか。

柳下:一番のこだわりは、開放感と隣のリビングとの一体感ですね。窮屈な空間にならないよう、二重窓サッシを2箇所に入れ、隣のリビングとの間仕切りは、設計士のお勧めで白サッシにしました。これが周囲とも調和しています。また防音室内はリビングより一段明るいフローリングにしました。

─ アビテックスフリータイプにして良かった点をお聞かせいただけますか。

柳下:壁に比べると音のはねが多いのですが、それほど気になりません。むしろほどよく響くので、ピアニスティックな曲を弾くと本当に気持ちが良いですね。生徒さんの中には、自宅がマンションで思い切り音が出せないといった問題を抱えている方もいますので、ここで弾けるのを楽しみにしているようです。
 またマンション特有の天井の梁の部分もうまく処理されており、天井も高く、素敵なレッスン空間になりました。そして在来工法にくらべて、比較的安く設置も割と簡単にできたので良かったです。
 サッシが2箇所入ってますが、壁面で十分吸音されていますので、周囲への音漏れはほとんどありません。近所は大変静かな住宅地ですが、苦情の類はこれまでありませんね。その点では、遮音性が高く適切な防音ルームになったと思います。



2.自宅に防音室を取り入れて、アンサンブルレッスンを実現

─ どのような生徒さんを指導されていますか。

柳下:今は越谷市の和幸楽器店、小学校低学年から60代まで幅広い年齢層もの生徒を教えています。最近はクラシック以外の曲を希望する生徒も多く、ポピュラーや中には演歌というリクエストもありますね。以前より関わるジャンルが増え、私自身の勉強にもなっています。

─ このレッスン室を設計依頼した時、ここでアンサンブル教室を開きたいという願いがあったとお伺いしましたが、その理由を教えて頂けますか。


5畳弱のアビテックス内に3台の楽器をおき、5人の生徒さんが入って「川の流れのように」をアンサンブル演奏。お互いの息遣いまで伝わってくる。5人の生徒さんは全員、浦和実年教室で知り合った仲で、もう6年半の付き合いになるという。この日は1週間後に控えるサロンコンサートに向けて、最終のあわせ。


ちょっとした工夫が教室の雰囲気を和らげる。

柳下:楽器店では基本的に個人ベースですなのですが、私個人としては生徒さん同士の交流をできるだけ広げたい、という願いも一方でありました。その点自宅は理想的な形でレッスンできています。実は来週末にサロンコンサートをやるのですが、今回は5人で「川の流れのように」を演奏します。クラビノーバで作成したデータを伴奏にして、ピアノ1人、クラビノーバ2人、キーボード2人という構成です。電子楽器はスプリット機能が利用できるので、こうしてアンサンブルする時は特に重宝しますね。
以前はキーボードを隣のリビングに置いて合わせてみましたが、やはり聞こえにくいので何とかレッスン室に入れてみました。今日は本番前の最後のレッスンでしたが、お互いの音色がしっかり聞こえたからか、綺麗に仕上がったと思います。

─ 待ち時間には、隣のリビングがコミュニケーションの場になっているようですが。

柳下:そうですね。現在5名の生徒さんを教えてますが、一人20分のレッスンを先に3人、それから5名全員によるグループレッスン、その後に残り2人、という形でレッスンを組んでいます。ガラスのサッシで仕切られているので、待ち時間には他の生徒のレッスンを見たり、楽しく談話しているようです。

大人の生徒を持って、適切なレッスン環境を知る

─ この5人でのアンサンブルは何回目ですか?

柳下:5人で演奏するのは今回で3回目です。実は6年半前、浦和公民館で行われたピティナ実年音楽教室が出会いのきっかけです。生徒さんをグループ分けをして教えたのですが、そこでこの5人の方に初めてお会いしました。グループ名はカナリヤ会と言いますが、実は私の名前「加奈」をかけた名前なんですよ(笑)。5人での初アンサンブルでは「第九」のアレンジ版に挑戦し、その後「日本の四季メドレー」を、そして今回「川の流れのように」です。その合間に2~3人編成のアンサンブルも何度かやっております。
毎年2回このレッスンルームでコンサートを行いますが、アンサンブルは必ず取り入れるようにしています。次は2~3人編成にして、互いの息遣いが分かるようにしたいですね。

─ 大人のアンサンブルグループを指導して感じたことを教えて下さい。

柳下:6年半の間には、色々試行錯誤していた時期もありました。けれど、5人の価値観が合っているからここまで続いたのだと思います。一度課題を与えすぎて、生徒さんから注意されたこともありましたが、大人の生徒にはそれぞれのペースがあるので、それを見極める必要があると感じました。短気を起こさず、長い目で見て生徒と接していくことが大切ですね。これは2~3年では答えが出ません。大人の生徒を持って初めて、気づかされました。



3.「夢の1曲」までの道のり


各パート練習別に柳下先生の指導が入る。


防音室に隣接しているリビング。ここはレッスン前後のくつろぎの空間になっている。この日は5人の合わせ練習の後、和やかに談話。

─ 今日のソロレッスンは、皆さん「島唄」「愛しのクリスティーヌ」などのポピュラー曲ですね?

柳下:やはりポピュラーを弾きたいという方が増えていますので、最近楽譜もポピュラー系が多くなってきました。クラビノーバを購入したのも、クラシック以外の音楽に対応できるようにと考えたからです。私自身のレッスンも、昔と比べ多様化してきました。

─ それでは、生徒の皆さんにもお伺いします。「川の流れのように」のアンサンブルパートは、どのように分けたのでしょうか?

生徒:今回はアミダくじで決めました(笑)。私たちは皆レッスン進度もピアノ歴も同じくらいですし、皆で和気藹々とピアノを習っています。月2回のレッスンですので、私たちにとっては丁度良いペースです。あまり練習できていない時は、あのレッスン室に入るのが少々恐いですが・・・(笑)、「楽しんでくれればいいですよ」という柳下先生の優しい一言でここまでやって来れています。

─ ピアノで弾いた後、クラビノーバの伴奏に合わせて弾いてましたね。とても楽しんでレッスンを受けていらっしゃるのが印象的ですが、ピアノを始めたきっかけと、将来弾いてみたいという「夢の1曲」を教えて下さい。

・今8歳になる孫が生まれた頃にピアノを始めたのですが、孫に「七つの子」などの童謡を弾き語りしてあげたいと思っています。将来はファミリーコンサートが夢ですね。(藤田さん・女性)

・私は開かずのピアノを開けなくては、、との思いでピアノを始めました(笑)。ショパンの別れの曲やノクターンを弾いてみたいです。自宅にはピアノがあるのですが、マンションなので6時には練習を切り上げるようにしています。(望月さん・女性)

・家には娘が弾いていたピアノが残っているのですが、このまま捨てるのは勿体無いと思って始めたのがきっかけです。左手が4分音符、右手が8分音符という弾きわけがどうしても出来ず,最初は大変でしたが、初めて出来た時は感動しました。一生ものの趣味ができました。 特にリチャード・クレイダーマンが好きなのですが、家の前にある小学校から時おり曲が聞こえてくるので、それに合わせて弾いて楽しんでいます。「愛しのクリスティーヌ」が憧れです。(松本さん・女性)

・私は70歳の時に始めました。昔はよくコンサートにも行ってまして、交響曲やコンチェルト「皇帝」が特に好きですね。弾いてみたいのは、yesterday once moreとヨハン・シュトラウスの「春の声」。ただなかなか自分のレベルに合う曲がないのが残念ですが、今度先生にアレンジして頂こうかな。(川原さん・男性)

・小さい頃からピアノを弾くのが憧れでした。今はショパンの原曲を弾くことを目標に、楽しみながら頑張っています。(宇野さん・女性)

─ 皆さんとても表情が活き活きしていらっしゃいますね。サロンコンサートに向けて、ラストスパート頑張って下さい。

(協賛:ヤマハ株式会社)

ピティナ編集部
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