ピアノとコーチング

第01回 「本番に緊張して実力が出し切れない」 加藤麗子先生

2005/10/28

本番でレッスンやリハーサルよりもずっと上手に弾いてしまう子。「子供っていいな~」とうらやましく思うことってありませんか? あんなに練習を積んだのに本番で全く力が出せないとがっくりきて悲しくなります。

スポーツ選手は、結果がすべて。それで年俸が決まってしまうので、本番へのメンタルトレーニングには練習同様に力を入れます。

いっぽう、同じ練習成果を出すものなのに、ピアノの世界ではメンタルトレーニングは遅れているのが現状です。本番で輝かしく自分を出し切るためにも、今回は皆様からいちばんご要望の多かった「緊張を解き自信を高める」方法をご紹介します。


それでは順を追ってお伝えしましょう。ピアノ指導者で、このたびはピアニストでもある加藤麗子さんにモニターになっていただきました。


1.目的はなんでしょう。
「すべてのステージが恐怖で、すべてのコンサートとコンクールでとんでもない結果になるのでリベンジしたいと思っています。本番の精神状態で天と地の差がある自分が、本当にイヤになっています。何が何でも変わりたい!」
ビデオ1

2.質問:何時、どこで、どんな場面での心理状態を手に入れたいですか? 「来年の9月のコンサートでは、過去の自分と決別して新しい自分のすべてを出し切りたい。会場一体となって盛り上がって弾いている自分、見られている快感をもう1度味わいたい。体もリラックスし、指も自然に、その時の気分で素敵な事を即興で入れて、のりのりで演奏したい。」
ビデオ2

3.過去の成功のイメージ、または理想のイメージを思い浮かべて言葉にしてください。 その時の会場の様子、ライトの明るさ、会場のにおい、ピアノの感触、音の響き、指や体の状態、心の状態を思い出します。今年の7月のコンサートの成功体験を語っていただきました。
ビデオ3

4.その情報とある動作を結び付けます。(安心できる動作、例えば鍵盤を触る、ハンカチを握り締める。など)最適な動作を加藤さんと相談しながら見つけ出します。
インタビューの結果、赤いハートのイヤリングを身に着け、大切なハンカチを持つと落ち着く事がわかりました。 【ビデオ4

5.「最高の演奏をした時の椅子」をイメージして座り動作と過去の成功体験を思い出します。この椅子は、誰にも邪魔されない、安心して弾けるあなただけの椅子です。
「ピンクのオーガンジーのようなふわふわ」に守られていると安心感を持てる、ということがわかりました。イヤリングの中からピンクの布を取り出し、スカートのところまで柔らかく広がる事をイメージします。これをどんなときでもできるようにします。その中に入るともう大丈夫。安心して弾ける状態になり、気持ちがリラックスします。
ビデオ5

6.ピンクの布を小さく折りたたんでイヤリングにしまいます。
いつでもどこでも、この布を広げれば最高の演奏が出来る場になります。
ビデオ6

7.意識を今の状態に戻します。

8.いつでもどこで動作と共に最高の状態に入り込めるように繰り返し練習していきます。


さて、このほかにも安心して弾く為のおまじないがあります。

1.恐怖心を叩き潰す。ビデオ7

2.演奏前の恐怖心を遠くへ飛ばす。安心できる言葉や人のイメージをクローズアップする。

3. 鏡に向かって朝晩の自己暗示。つぶやき声で言うことがコツです。(中村天風の自己暗示法)

4. 自己命令の法則・・・・ネガティブな事を言うと体もネガティブになる。

5. 「ピアノが上手に弾ける呼吸法」・・・「吐く」事が大切。おへその下に小さな球をイメージし、9秒吸って、25秒吐く。体を緩めると心も緩む。

これらの方法は、私自身が試してみて、また実際にピアニストや学生、先生方にやっていただいたところ、大きな効果をあげています。
「怖くなくなった」「集中できた」「いつも冷たくなる指が温かくなった」など好評です。 皆さんも独自の方法を研究してみてください。



今回のポジティブレッスン、いかがでしたか?
このコーナーは皆さんの声をもとに作りたいと思っています。
皆さんの「これが効く!」といった方法があったら教えてくださいね。

また、感想・先生や生徒さんの現場の声・お母様方の悩みなどのお便りもお待ちしています。

これからもみなさんがもっと素敵にピアノに関われるように、もっと効率よく結果が出せる方法などメンタル面からのサポート法をお伝えしていきます。

~加藤麗子さんよりのメール(抜粋)~
このたびは本当にありがとうございました!今回は素晴らしい体験をさせていただきました。自分があのように周囲を気にせず堂々とピアノソロを弾けるなんて考えもしませんでした。
デュオのときはかなり落ち着いている場合が多いのですが、ピアノを10年間も弾いていなかったことでかなりのハンデイーがあり、今は逆に弾きたくても弾く時間が全くなく、ソロで舞台に立つこと自体が恐怖です。せめて精神的に落ち着いていればかなり違うと確信しています。私は単純な性格で、環境に左右され易いですが訓練を重ねて先生のコーチングをさらに受け、確実なものにしたいと思います。

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