【こどものためのJAPANピアノ作品集8-1】 湯山昭作曲 『こどものせかい』 特集1
2012/04/12
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湯山昭先生のピアノ作品集
湯山先生のピアノ作品集には、この『こどものせかい』の他に、『こどもの国』や『日曜日のソナチネ』(音楽之友社刊)、『お菓子の世界』や『音の星座』(全音楽譜出版社刊)、『小鳥になったモーツァルト』(カワイ出版刊)、そしてピアノ教則本『こどもの宇宙』や『ピアノの宇宙』(全音楽譜出版社刊)があります。中でも特に、手の小さいこどものために、オクターヴ奏法を使わずに書かれた最初の作品集が『こどもの国』で、その後、音域に制限を設けず書かれた『日曜日のソナチネ』や『お菓子の世界』を経て、10年後に再びオクターヴなしで書かれたのが、この『こどものせかい』でした。
『こどものせかい』の特徴
湯山昭先生とは
以前この連載で、湯山先生ご自身にインタビューをさせていただきました(記事へ)。その中で先生は、一人で過ごされることが多かった子ども時代を振り返られ、その頃の記憶がこどものための作品につながっている、とのお話をしてくださいました。芸大に進まれ、日本音楽コンクールで入賞されるなど、エリート作曲家としての道を歩まれつつ、その確かな技術をこどものための作品にも全力で注ぎ込まれ、数々の名曲が生み出されてきました。この『こどものせかい』についても、「遥かな少年時代への賛歌」と湯山先生は位置づけられています。
'湯山ワールド'の魅力
湯山先生のこどものための作品の魅力を音楽的に分析すると、先生ご自身も初版まえがきにて書かれているとおり、「さまざまなリズム」、また「現代的な和音の響きや日本の音の美しさ」、そして「転調がもたらす色彩の変化」といったことが挙げられるでしょう。例えば3拍子の中に現れる2拍子的なリズム(ポリリズム)、またどこか懐かしさを湛えた童謡的なメロディーや、カーンと響く気持ちのよい不協和音、そしてドキッとするような意外で美しい転調など...。これらが巧みに組み合わされ、魅力的な'湯山ワールド'を形作っていると言えましょう。
次回は、音源を交えながら、個々の作品についてご紹介させていただく予定です。どうぞお楽しみに!
須藤 英子(すどうえいこ)
東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/
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