ピアノ曲MadeInJapan

【こどものためのJAPANピアノ作品集6】 全音ピアノピース大解剖!

2011/06/10
全音ピアノピース...。「エリーゼのために」や「トルコマーチ」などが、1曲ごとに冊子になっているその楽譜は、私など小さい頃から憧れの楽譜でした。楽譜裏のピース一覧表を見ては、今度はこの曲を!と、憧れを新たにしたものです。ところでその一覧表の後半には、日本人作曲家の作品が数多く存在するのを、ご存知でしたか?


全音ピアノピースの中のJAPAN
ピースについては、お馴染み連載「みんなのブルグミュラー」で、以前詳しく調査されていましたね(連載記事へ)。その中で、もともと筝や尺八など邦楽曲だったものをピアノ用にアレンジした作品については、私も以下で一緒に調査させていただきました!

ZADAN:第07回 ピース邦楽曲を聴く ~全音ピアノピースってすごいよね!!~

ZADAN:第08回 ピース作品のご使用法 ~全音ピアノピースってすごいよね!!~

ZADAN:第09回 ピース邦楽曲を聴く 其の二 ~ピース邦楽曲の背景 ~全音ピアノピースってすごいよね!!~

ここでは、その後日本人作曲家によって書かれたピアノのための作品について、ご紹介させていただきます!


難易度別の日本人作品
私が持っているピースの中で、最新と思われる一覧によると、日本人作品(邦楽作品を除く)の難易度は以下の通りとなっています。

A(=初級):5曲
B(=初級上):8曲
C(=中級):25曲
D(=中級上):15曲
E(=上級):17曲
F(=上級上):6曲

レベルC(=中級)が最も多く、その次に、E(=上級)、D(=中級上)と続きます。日本人作品となると、やはり現代音楽的な曲も多く、D、E、Fといった上級者レベルのものも多くあります。例えば、前回の連載で紹介させていただいた一柳慧「ピアノ・メディア」などはFに分類されていますが、上級レベルには、このように歴史的に重要な作品も数多く、ピースが日本のピアノ曲の歴史に大切な役割を果たしてきたことが分かります。ただこれら上級レベルの作品は、専門教育を受けた人にとっても譜読みが難しく、高度なソルフェージュ能力が必要とされます。そこで今回は、A、B、Cといった、学習段階の子どもさんでも弾けるレベルの作品を調査しました。


学習者レベルの曲
レベルAやBについては、残念ながら絶版になってしまっているものも多かったのですが、その中でも例えば、助川敏弥作曲「315 糸かけ 糸かけ 糸がかり / そこまで春が」(レベルA)や、野田暉行作曲「こどものための三つの小曲」(レベルB)などは、なかなか魅力的な曲でした!

レベルA「糸かけ...」には、「糸かけ 糸かけ 糸がかり」と「そこまで春が」という、春にちなんだ作品2曲が収録されています(さらに、この2曲を収録した『やさしいピアノ曲集「ちいさな四季」』という曲集も、全音から出版されています!)。春先に、小さな女の子がかわいらしく弾く姿が浮かぶ・・・ような2曲です。

助川敏弥作曲/糸かけ糸かけ糸かがり(全音ピアノピース315より)
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助川敏弥作曲/そこまで春が(全音ピアノピース315より)
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また、レベルBの「こどものための...」には、「飛行機」「ヨット」「夢の馬車」という3曲が収録されています。私事ですが、1歳の息子が乗り物大好き、その男友達も乗り物大好きなことから、題名を見たとたんに、'これは男の子にうってつけ!'と思ってしまいました。どの曲も生き生きとして、とっても魅力的な作品です。

野田暉行作曲/飛行機(全音ピアノピース473より)
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野田暉行作曲/ヨット(全音ピアノピース473より)
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野田暉行作曲/夢の馬車(全音ピアノピース473より)
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発表会向きの曲
最多曲数を誇るレベルCには、ヒット曲(?)もいくつか存在し、選択の幅も随分広がります。ある程度色々な曲が弾けるようになり、たまには少し雰囲気の違う曲も弾きたくなってきた子などには、もってこいですね。例えば発表会で、世界の名曲に混じってちょっと和風の知られざる名曲を弾くのも、かっこいいものです。そこで次回から3回にわたり、発表会で弾きたい全音JAPANピースとして、このレベルCの中から3曲ほど、ご紹介させていただきます。邦楽系ヒット曲や、ポップス的ソナチネ、そしてレトロな香り漂う小品などなど...。どうぞお楽しみに!



須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

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