【こどものためのJAPAN5-1】中田喜直作曲 『こどものゆめ』 初級編
2011/04/07
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前回ご紹介した、
中田喜直作曲『こどものゆめ』。
難易度「★」から「★★★」まで全24曲のうち、今日は初級者向き(「★」=バイエル100番ぐらいまで)の10曲を、音源とともに1曲ずつご紹介させていただきます!
まずはメロディー!
中田先生の作品の魅力は、まずなんといっても、その味わい深いメロディーにあるでしょう。初級編の曲でも、早速、魅力的なメロディーが次々に登場してきます。シンプルながらも、つい口ずさみたくなる、どこか懐かしい歌い回し...。それを、いかに自然に美しく弾けるか、が初級の大きな目的と言ってよいでしょう。
メロディーを歌わせる、という'テクニック'
ただ、ピアノでメロディーを歌わせることほど、難しいことはありませんね。心の中で一緒に歌う、ということは基本ですが、ピアノは基本的に打楽器!それだけではうまくいかないことも、多いでしょう。そこで活躍するのが、スラー。スラーの山に沿って、かすかにクレッシェンド&デクレッシェンドをつけてあげると、美しいメロディーラインが描けますね。
歌う、というのも、ピアノを弾く上では、基本的かつ最重要な'テクニック'のひとつだと、私は思います。
各曲ご紹介
初級編の曲では、1 左右どちらの手でもメロディーを美しく歌わせること、2 黒鍵が含まれていてもきれいなメロディーラインを描けること、また、3 和音の中に隠れているメロディーを浮き立たせることなど、様々な角度からメロディーの歌わせ方を練習できる工夫がされています。ここでは、1と2を《メロディー》、3を《ハーモニー》と分類し、以下曲ごとに簡単な解説を加えさせていただきました。音源とともに、選曲の参考にしていただければ幸いです!
第1番 おぎょうぎよくね 《メロディー》
作曲者による「練習のてびき」にも書かれているとおり、左手でもメロディーを美しく歌わせるための練習曲。スラーとスタッカートをよく区別しながらきちんと弾くと、「おぎょうぎよく」聞こえます。時々右手に出てくるメロディー部分で、中田先生らしい日本的な音階が使われているのが印象的です。
第2番 卵のかたちの練習曲 《メロディー》
黒鍵を使いつつ、手を卵の形にしたまま弾く練習。左右ともに手のポジション移動が全くないので、シャープが多いわりには、弾きやすい曲です。黒鍵が含まれていても、スラーに注意して丁寧に歌うことで、卵らしい丸みや温かみが、曲からも味わえるでしょう。
第3番 さよなら またあしたね 《メロディー》
「さよなら」の淋しさが短調で、「またあした」の嬉しさが長調で表現されているような曲。左手の和音は、ほとんどがa-mollとC-durの基本的な和音ですが、その変化をひとつずつ感じながら、右手のメロディーをつぶやけると、感情が伝わってきます。
第4番 やさしい変イ長調 《メロディー》
親指に黒鍵が当たるので、同じく黒鍵の多い第2番よりは難しい曲。左右両方に出てくるメロディーを、黒鍵が含まれていても美しく歌わせることが大切です。余談ですが、最後の方に出てくる右手のメロディーが、なんとなくラジオ体操を思い出させます...!
第5番 日本のいなか 《メロディー》
純日本風の曲。「♪ シーラシッシッ シッシラシー...」というメロディーを、いつでもしっかりと浮き立たせることが大切。中間部から左手に出てくる半音階によって、和音の雰囲気がどんどん変わっていくことにも意識を向けると、演奏に深みが増します。
第6番 しずかに音階はうたう 《メロディー》
初めての見開き2ページ作品。音階による、1フレーズの中での手のポジション替えをスムーズにし、メロディーをレガートで歌わせることがポイントです。一番最後に一瞬現れる和風のハーモニーが、この曲に味わいを増しています。
第7番 冬のコラール 《ハーモニー》
作曲者による「練習のてびき」にも書かれている通り、和音の中で変化する音を、メロディーとして浮き立たせるための練習曲。どの声部を聞かせると美しく聞こえるか、最初は先生が何通りか見本を聞かせてあげるといいかもしれませんね。冬の寒さが、ヒシヒシと伝わってくるような曲です。
第8番 冬のメロディ 《メロディー》
中田先生らしい、味わいある短調の曲。中間部の長調では、左手がチェロのように歌い上げます。細やかに付けられているスラーを、まずは実際に声に出して歌ってみてから弾いてみると、フレーズの意味が分かりやすくなるかもしれません。
第10番 アーモルのおじさん 《メロディー》
中田先生のこどもの曲には、よく人物が登場します。この曲集でも、他に「おじいさんのワルツ」(★★)がありますが、人物が出てくると、想像力も一層かきたてられますね。「アーモルのおじさん」、一体どんなおじさんなのでしょう。そしておじさんに、何が起こったのでしょう。スラーに注意しながら、物語を紡いでいきましょう。
第17番 しずかなおはなし 《ハーモニー》
素朴なわらべ歌のような曲。和音の上で響くメロディーに、途中からオブリガートも付いてきます。どの音を目立たせたいのか、はっきり意識ながら弾くと、とたんに面白くなるかもしれません。
次回は、中級編7曲をご紹介予定です。どうぞお楽しみに!!
難易度「★」から「★★★」まで全24曲のうち、今日は初級者向き(「★」=バイエル100番ぐらいまで)の10曲を、音源とともに1曲ずつご紹介させていただきます!
まずはメロディー!
中田先生の作品の魅力は、まずなんといっても、その味わい深いメロディーにあるでしょう。初級編の曲でも、早速、魅力的なメロディーが次々に登場してきます。シンプルながらも、つい口ずさみたくなる、どこか懐かしい歌い回し...。それを、いかに自然に美しく弾けるか、が初級の大きな目的と言ってよいでしょう。
メロディーを歌わせる、という'テクニック'
ただ、ピアノでメロディーを歌わせることほど、難しいことはありませんね。心の中で一緒に歌う、ということは基本ですが、ピアノは基本的に打楽器!それだけではうまくいかないことも、多いでしょう。そこで活躍するのが、スラー。スラーの山に沿って、かすかにクレッシェンド&デクレッシェンドをつけてあげると、美しいメロディーラインが描けますね。
歌う、というのも、ピアノを弾く上では、基本的かつ最重要な'テクニック'のひとつだと、私は思います。
各曲ご紹介
初級編の曲では、1 左右どちらの手でもメロディーを美しく歌わせること、2 黒鍵が含まれていてもきれいなメロディーラインを描けること、また、3 和音の中に隠れているメロディーを浮き立たせることなど、様々な角度からメロディーの歌わせ方を練習できる工夫がされています。ここでは、1と2を《メロディー》、3を《ハーモニー》と分類し、以下曲ごとに簡単な解説を加えさせていただきました。音源とともに、選曲の参考にしていただければ幸いです!
第1番 おぎょうぎよくね 《メロディー》
作曲者による「練習のてびき」にも書かれているとおり、左手でもメロディーを美しく歌わせるための練習曲。スラーとスタッカートをよく区別しながらきちんと弾くと、「おぎょうぎよく」聞こえます。時々右手に出てくるメロディー部分で、中田先生らしい日本的な音階が使われているのが印象的です。
第2番 卵のかたちの練習曲 《メロディー》
黒鍵を使いつつ、手を卵の形にしたまま弾く練習。左右ともに手のポジション移動が全くないので、シャープが多いわりには、弾きやすい曲です。黒鍵が含まれていても、スラーに注意して丁寧に歌うことで、卵らしい丸みや温かみが、曲からも味わえるでしょう。
第3番 さよなら またあしたね 《メロディー》
「さよなら」の淋しさが短調で、「またあした」の嬉しさが長調で表現されているような曲。左手の和音は、ほとんどがa-mollとC-durの基本的な和音ですが、その変化をひとつずつ感じながら、右手のメロディーをつぶやけると、感情が伝わってきます。
第4番 やさしい変イ長調 《メロディー》
親指に黒鍵が当たるので、同じく黒鍵の多い第2番よりは難しい曲。左右両方に出てくるメロディーを、黒鍵が含まれていても美しく歌わせることが大切です。余談ですが、最後の方に出てくる右手のメロディーが、なんとなくラジオ体操を思い出させます...!
第5番 日本のいなか 《メロディー》
純日本風の曲。「♪ シーラシッシッ シッシラシー...」というメロディーを、いつでもしっかりと浮き立たせることが大切。中間部から左手に出てくる半音階によって、和音の雰囲気がどんどん変わっていくことにも意識を向けると、演奏に深みが増します。
第6番 しずかに音階はうたう 《メロディー》
初めての見開き2ページ作品。音階による、1フレーズの中での手のポジション替えをスムーズにし、メロディーをレガートで歌わせることがポイントです。一番最後に一瞬現れる和風のハーモニーが、この曲に味わいを増しています。
第7番 冬のコラール 《ハーモニー》
作曲者による「練習のてびき」にも書かれている通り、和音の中で変化する音を、メロディーとして浮き立たせるための練習曲。どの声部を聞かせると美しく聞こえるか、最初は先生が何通りか見本を聞かせてあげるといいかもしれませんね。冬の寒さが、ヒシヒシと伝わってくるような曲です。
第8番 冬のメロディ 《メロディー》
中田先生らしい、味わいある短調の曲。中間部の長調では、左手がチェロのように歌い上げます。細やかに付けられているスラーを、まずは実際に声に出して歌ってみてから弾いてみると、フレーズの意味が分かりやすくなるかもしれません。
第10番 アーモルのおじさん 《メロディー》
中田先生のこどもの曲には、よく人物が登場します。この曲集でも、他に「おじいさんのワルツ」(★★)がありますが、人物が出てくると、想像力も一層かきたてられますね。「アーモルのおじさん」、一体どんなおじさんなのでしょう。そしておじさんに、何が起こったのでしょう。スラーに注意しながら、物語を紡いでいきましょう。
第17番 しずかなおはなし 《ハーモニー》
素朴なわらべ歌のような曲。和音の上で響くメロディーに、途中からオブリガートも付いてきます。どの音を目立たせたいのか、はっきり意識ながら弾くと、とたんに面白くなるかもしれません。
次回は、中級編7曲をご紹介予定です。どうぞお楽しみに!!
須藤 英子(すどうえいこ)
東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/
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