極度に内気な性格ゆえに演奏会を嫌ったというアルフレッド・フォン・ヘンゼルト(1814-1889)は歴代屈指の名ピアニストとされ、とりわけサロンにおけるピアニズムの祖となっている。そのピュアーで滑らかな音色を伝える象徴的な作品が「ベルスーズ」である。レオポルト・ゴドフスキー(1870-1938)の変奏曲として知られる。
Category XXII「子守歌」
2017/06/05
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Category XXII「子守歌Berceuse」
静かで優しく、夢見るようなベルスーズにおいてもショパンの作品が唯一知られラものとなっている。傑作ではあるが、子供が心地良く眠れるという観点からは、より望ましい作品はいくつも存在する。思うに、重要なのは生理的な安心感ではないだろうか。さすがに短調で「子守歌」を書いた人は見当たらなかった。
ベルギーのフーベルト・フェルナント・クッフェラート(1818-1896)は指揮者。ピアニストとして活躍、控え目だが豊かな情感、熟練した書法、ピアニズムを備える。春風のように温和であらゆる資質が調和した得難い個性といえるだろう。
ショパンからスケルツォ第3番Op.37を捧げられ、その贔屓ぶりに他の弟子の嫉妬を買うほどだったアドルフ・グートマン(1819-1882)。この逞しい偉丈夫にショパンが見出した魅力とは、朴訥さの中に潜むナイーヴな感性であったろう。60点のピアノ曲があり、その音楽はショパンの死後、ショパンから離れて行く。「ベルスーズ」はそうした時期の彼を物語る。晩年のグートマンは画家に転向したとされる。
パリの批評家として著名なオスカール・コメッタン(1819-1898)は、機智に富んだピアノ曲を書いた。それらはピアニスティックでもシンフォニックでもなく、シャンソン風、もしくはオペレッタ風の趣味に彩られる。彼の「ベルスーズ」は「6つの性格的小品」の第3曲。Op.番号を廃した1880年代の作。
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