ピアノブロッサム

Category XIII 「スケルツォ Scherzo」

2016/12/22
Category XIII「スケルツォ Scherzo

スケルツォの起源は古く、17世紀に遡るとみられるが、ハイドン、ベートーヴェンらによって交響曲、ソナタなどの中間楽章名として定着。ショパン世代になってピアノ曲の独立した曲種として確立された。「諧謔曲」ゆえに勢いテンポは速いが、必ずしもユーモラスな音楽ではない。機敏さ、能動性を主体とした内容で、一定の規模を備えた力作が目立つ。

"もう一人のピアノの詩人"ステファン・ヘラ―(1814~1888)の卓越した創造性について知る人は少ない。ショパン、シューマンと比べて余りにも軽んじられてきたヘラ―は超絶技巧的な書法を嫌い、ピュア―な簡潔さを求めるあまり、一見穏健な中級者向けのサロンピースの作曲家と見られてきたためである。しかし、その「前印象派的」作品が特にフランスの次世代に与えた影響は少なくない。チャールズ・ハレに捧げたこの「幻想的スケルツォ」も、皮肉なまでに単純化された書法から立ち上る幻想的名技性は驚異的である。

S.Heller:Scherzo fantastique Op.57(ホ短調) pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2016/12/11)

ボヘミア出身のオーストリア人、ヨーゼフ・アダルベルト・パッヒャー(1816~1871)も悪魔的な名技性を打ち出した作曲家である。ただし、アルカンより色彩感は地味で、音楽もウィーン古典派寄りである。その象徴的な例が「地獄の踊り~幻想的スケルツォ」であろう。ただし、こうした悪魔的なものへの指向はこの世代の音楽家たちが共有していた時代のモードであって、個人のキャラクターに帰するものとは言い難い。

J.A.Pacher:La Danse Infernale, Scherzo fantastique Op.14(ハ短調) pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2016/12/11)

エデュアルト・レッケル(1816~1899)は音楽一家に生れ、父は当代の名テノール、その妹の叔母はフンメル夫人である。兄・弟も作曲家となった。エドゥアルトはフランス国境に近いドイツ、トリーアの出身。30代に入ってイギリスに定住する。Op.番号が付く作品はドイツの青年時代の作で、祖国の田園風景を想わせるのどかな情趣を特徴とする。
この「スケルツォ」は素朴ながら複雑な書法による技巧曲。2拍子のスケルツォは珍しい。

E.Roeckel:Scherzo Op.5 pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2016/12/11)

リストから「ピアノ協奏曲第1番」を献呈されたヘンリー・リトルフ(1818~1891)は、リストを凌ぐ波乱万丈の生涯を送った人である。その名は名ピアニスト、作曲家としてより、出版経営者として今日に伝わっている、マルモンテルに書かれたこの「スケルツォ」は幾分フランス風な香りを放つ名品といえるだろう。

H.Litolff:Scherzo Op.115(嬰ト短調) pf:Osamu N. Kanazawa (録音:2016/12/11)

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