カール・グレーデナー(1812ー1883)はチェリスト、指揮者として活躍した人で、その優れた室内楽曲はライネックやブラームスに少なからず影響を及ぼしている。(実際、彼らに書かれた作品が存在する)。
「ひとときのブレッター」と題された3編の小品集の第2集 Op.33はグレーデナーの三人の子どもたちのために書かれ、「初めての大きな悲しみ」は最終の第9曲。こうした音楽を曲集の最後に据えるというのは、異色といえよう。
今回は「悲しみ」をテーマとした特集である。
この種のタイトルのピアノ曲はセンチメンタルで低俗なもの、と思われがちなせいか、今に伝わる作品はきわめて少ない。それだけに作曲者の趣味と品性が問われることになろう。そうした格調を失わない作曲家を選んでみた。
カール・グレーデナー(1812ー1883)はチェリスト、指揮者として活躍した人で、その優れた室内楽曲はライネックやブラームスに少なからず影響を及ぼしている。(実際、彼らに書かれた作品が存在する)。
「ひとときのブレッター」と題された3編の小品集の第2集 Op.33はグレーデナーの三人の子どもたちのために書かれ、「初めての大きな悲しみ」は最終の第9曲。こうした音楽を曲集の最後に据えるというのは、異色といえよう。
1815年生れの作曲家中、最大の存在がローベルト・フォルクマン(1815-1883)とみられる。明快で彫りの深い音感、堅牢な構築力は強い個性を放つ。
「旅のスケッチ Op.23」は8曲の小品からなり、「悲裏の刻」はその第5曲。長調の中間部は両手共にトレモロのみ。あまり例のない書法である。
ハルフダン・シェルルフ(1815ー1868)はロシアのグリンカの如く、ノルウェー音楽のパイオニア的存在。音楽を専門的に学んだのは遅く、合唱曲、歌曲など声楽を中心として創作活動を行った。Op.12は6つのピアノ曲集で「エレジー」は第3曲。後のグリーグのような北欧の風土色の反映は見られず、至って抽象的な清明さがある。
ステファーノ・ゴリネーリ(1818-1891)は19世紀イタリアのピアニスト・コンポーザーの始祖といえる。230曲を超えるピアノ曲を書き、タールベルクやヒラーに啓発された高度なヴィルトゥオジティとベルカントが鮮やかに結びついている。「ラ・マリンコニア Op.72」は印象的なメロディを変奏してゆく華麗なショー・ピースとなっている。献呈者なし。