ザウターレビュー
ザウター Sauter
グランド | ||
機種名 | 奥行き | 国内価格 |
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160トラディション | 160cm | 4,390,000 |
185デルタ | 185cm | 4,790,000 |
220オメガ | 220cm | 6,770,000 |
275コンサート | 275cm | 11,500,000 |
アップライト | ||
機種名 | 高さ | 国内価格 |
114バロック | 114cm | 1,530,000 |
122ドミノ | 122cm | 1,980,000 |
※価格は2004年10月時点のものです |
最近では取扱う楽器店が増えているものの、今までにレビューを書いた4社に比べると、国内ではそれほど有名とはいえないメーカーだと思います。ザウターは1819年創業で、ドイツで現存するうちでは2番目に古いメーカーです。その本拠地は南ドイツののどかな小都市であったためか、2度の世界大戦の影響も比較的小さかったようで、この期間中にも工場を拡大しています。
現在では275cmのフルコンサートモデルまでラインナップされていますが、19世紀中は主にスクエアピアノ(アップライトピアノ発明以前に生産されていたコンパクトな設計のピアノ)を製造していたようです。20世紀初頭にはアップライトへ移行し、グランドピアノの製造については比較的歴史が浅く、1950年代からだそうです。
このように小さな楽器を中心に作ってきたという歴史的経緯を反映しているためか、ザウターのアップライトピアノや小型のグランドピアノには独特の個性ある魅力を感じます。設計上の特徴にはベーゼンドルファーと共通点が多いとのことですが、その発音のタイミングや響き方は似ているものの、ベーゼンドルファーが華やかで、かつ重厚な音色を持っているのに対し、明るく素朴な印象を受けました。
ザウターのピアノは音の強弱や音色に変化を加えたいときには非常に敏感に反応します。モデル160は複数回、弾く機会を得ることができましたが、特に中音部から高音部にかけての音色の豊かさ、表現する上での引き出しの多さは特筆に価すると思います。反面、極低音部では表現の幅がやや狭まるのを感じました。奥行き僅か160cmのピアノとしては決して音量面で不足があるわけではないのですが、どうしても中高音部の圧倒的な心地よさと比較してしまいます。もっともこの160に関してはその「アンバランスさ」も含めて魅力があると言えるかもしれません。185や220ではその大きさによって低音部の不満は解消されるのですが、中高音部を演奏しても160で同じ音域を弾くときほどの気持ちよさは感じませんでした。185や220はバランスがよく、楽器としての性能は160を上回るのですが、「ザウターらしさ」がもっとも良く現れているのは160アルファであるような気がしました。
ザウターのピアノはその音質から、比較的狭い部屋でも奇麗に鳴り響くのではないかと思います。そのユニークさにはぜひ一度触れていただきたいです。普段お使いのピアノが国産やスタインウェイのピアノであれば、相当な違いを感じることと思います。その音色や演奏した時の感覚はフォルテピアノに類似するとも言われます。実際、古典派やバロックの楽曲を弾くのは気持ちが良いでしょう(古典期の曲であれば極低音域は使われません)。 個人的にはシューマンやブラームスなどのドイツ・ロマン派作曲家の作品も合っているように思います。
ザウターのピアノは製造後数年で最高の響きが得られるような設計されているとのことで、楽器を育てる楽しみもありそうです。