ヤマハ・グランドピアノレビュー
ヤマハ・グランドピアノ
機種名 | 奥行き | 価格 |
---|---|---|
Z1 | 151cm | 924,000 |
A1L | 149cm | 1,050,000 |
C1L | 161cm | 1,207,500 |
C2L | 175cm | 1,365,000 |
C3L | 186cm | 1,680.000 |
C5L | 200cm | 1,890,000 |
C6L | 212cm | 2,310,000 |
C7L | 227cm | 2,730,000 |
C3LA | 186cm | 1,942,500 |
C5LA | 200cm | 2,205,000 |
C6LA | 212cm | 2,625,000 |
C7LA | 227cm | 3,150,000 |
S4 | 191cm | 3,780,000 |
S6 | 212cm | 4,305,000 |
CFIIIS | 275cm | 11,550,000 |
※価格は2004年9月時点のものです。 モデル表中の機種名に誤りがあり修正しました。謹んでお詫び申し上げます。(10/2) |
グランドピアノはどのメーカーの製品でも、大抵の場合奥行きの長さでモデル分類されます。ヤマハ・グランドピアノの主流はCシリーズですが、これも同様の方法に準じてラインナップが組まれています。基本的に奥行きが長いほど性能も価格も高くなります。しかしグランドピアノにとって適度なサイズというのはあるようです。ヤマハのモデルでは186cmの奥行きを持つC3以上が、バランスが良いとされることが多く、売れ筋もこのモデルだそうです。6畳の部屋にもなんとか入るC3は、音大生や本格的に練習をする人のピアノとして購入されるケースが多い機種です。確かに店舗で弾いている限り、それは納得のできることです。しかしながら、8畳以下広さの部屋にC3を置いた場合、部屋の形や壁などの素材、他の家具などの環境によっては、過大な音量となる可能性があります。
ヤマハ最小のグランドピアノは奥行きが150cm前後のZ1やA1です。店舗で弾いた限りでは、最大のアップライトであるYU-50よりも発音量はやや乏しい感じがします。とはいえグランドピアノですので、演奏中の音の聴こえ方は優れています。アクションはもちろん、より大きなグランドピアノと同じく反応が良いものです。因みに筆者は過去、C3とほぼ同じ大きさのモデルG3(1994年まで生産)を6畳間に入れて使ってきました。性能的に不満はありませんでしたが、音量がやや大き過ぎ、長く練習するとそのために疲労してしまうということがありました。予算の折り合いがつき、店舗で性能差を感じるとぎりぎり部屋に入るサイズのピアノを選んでしまいそうですが、家に入れたときに無理なく使いきれるサイズのピアノを選ぶのが、賢い選び方かもしれません。
さて、主流のCシリーズには最近になってArtisticEdition(以下AEと略)が追加されました。相違点は響板の素材などにあるそうですが、見た目はほとんどかわりません。価格は従来のCシリーズよりも2~3割ほど高価になっています。好みもありますが、店舗で比較した感じでは、その価格差には十分納得ができ、むしろお得な印象を受けました。AEの方が洗練された音色で、出せる音色の種類もより多いように思います。同サイズであれば音量に差はないと思いますが、落ち着いた音なので、狭い部屋に置いた場合、従来型よりも耳が疲れないで、長時間の練習ができるでしょう。
一方、Cシリーズ、AEシリーズの系列とは別に、Sシリーズという高級な楽器がラインナップされています。S4、S6の2種がありますが、価格はCシリーズのほぼ同じ大きさのモデルと比べて2倍以上になります。これを試弾したところ、Cシリーズと比べても、さすがに楽器の隅々にわたる精密さ、品質の高さを感じることができました。選ぶうえで障害となるのはやはりその価格です。このクラスのピアノを選ぶのであれば特に、他メーカーの同価格帯、あるいはより上級のピアノと比較することを強くお勧めします。アップライトの項でも書いたように、Sシリーズも含め、ヤマハには「全音域において均質で澄んだ音」という個性があり、これはヤマハ独自の美意識が生んだ個性です。ヤマハの楽器作りに共感しているのであれば、Sシリーズは決して高い買物ではないでしょう。音色に変化をつける際などの操作性、音の伸びなどは世界のトップクラス(価格面でも)のピアノと比べて劣るものではありません。
また、ヤマハピアノは耐久性に定評があります。5~10時間もの激しい練習を毎日するという音大生などから、ヤマハのピアノは他メーカーのものに比べて「くるわない」という話をよく聞きます。湿度が格段に低いヨーロッパに比べて高音多湿な日本の気候は、楽器にとって過酷な条件であることは間違いないでしょう。そのような悪条件でもヤマハピアノは大きなくるいを生じることが少ないようです。購入後の問題については、店舗だけでは分からない部分です。どのような選択をするにあたっても、同じ機種を似たような条件で使っている人の意見を聞くことができれば、大いに参考になります。
さて、ヤマハラインナップの頂点にあるのは「フルコン」と呼ばれる大型ピアノのCFIIISです。日本国内の中型以上のホールでは、スタインウェイのモデルDに次いで目にする機会が多いピアノです。全長275cm、500kgの巨大なピアノで、個人で購入するケースは少ないでしょう。これも当然ながらヤマハらしい音のする楽器ですが、この機種に触れて他のモデル、特にS型との繋がりを感じることができました。ヤマハのピアノがどういった「良さ」を目指しているのか。CFに触れる機会があれば、おそらく感じ取れることと思います。