ロンドンレポート

ベビーと一緒にクラシックコンサート No.3 クラシカル・ベイビーズ

2014/06/06
第1回第2回第3回English
ベビーと一緒にクラシックコンサート ~No.3 クラシカル・ベイビーズ
初開催地O2センターで2周年バースデーコンサート (c)http://www.matsmithphotography.com/ 初開催地O2センターで
2周年バースデーコンサート

次に紹介する「クラシカル・ベイビーズ」は、ウィグモアホールの企画が'一流のコンサートホールに赤ちゃんを連れて来る'という特色を持つのに対して、'ママの日常にコンサートを持ってくる'ことがモットー。ロンドン市内・近郊を中心に8か所のママ・フレンドリーな会場で、毎月異なる編成での室内楽のコンサートを開いている。プロのヴァイオリニスト、アントニア・アゾイテイが主宰する「クラシカル・ベイビーズ」はどのように運営されているのだろうか?

--- 情報 ---
■名称:
クラシカル・ベイビーズ Classical Babies
主宰:
アントニア・アゾイテイ Antonia Azoitei(ヴァイオリニスト)
会場:
St. Peter's Church(Belsize Park/ロンドン)、
The O2 Centre(Finchley Road/ロンドン)
Childs Hill(Finchley Road/ロンドン、主宰者自宅サロン)、
Landmark Arts Centre(Teddington/サリー)Waterhouse Café(Kingswood/サリー)
St Martin of Tours Church Hall(Epsom/サリー)
Harpenden Musicale(Harpenden/ハートフォードシャー)
St. James' Church(Didsbury/マンチェスター)
のロンドン市内、近郊を中心とした8か所(2014年6月現在)
対象:
0歳から3歳までの乳幼児と保護者
日時:
毎月、平日の午前11時から約40分のコンサート、その後に楽器体験あり
参加:
大人10ポンド、乳幼児無料。予約可能。
参照:
http://www.classicalbabies.com/
ママ友達と共有したい、赤ちゃんが音楽を喜ぶ姿
主宰者・アントニア・アゾイテイは2児の母(c)http://www.matsmithphotography.com/主宰者・アントニア・アゾイテイは2児の母

ヴァイオリニストのアントニアは、イギリスの公共放送局BBCの抱えるオーケストラの一つで、ラジオやプロムスなどでクラシックからポピュラーまで幅広い演奏活動をするBBCコンサート・オーケストラで、フルタイムで働いていた。同じくヴァイオリニストでありロイヤルアカデミー・オブ・ミュージックの教授であるレムス・アゾイテイと結婚した後は、フリーランスとして活躍していた。どういうきっかけで、「クラシカル・ベイビーズ」を始めたのであろうか?彼女にインタビューした。

―「クラシカル・ベイビーズ」をスタートしたきっかけは?

(c)http://www.matsmithphotography.com/

「私は妊娠中もずっとヴァイオリンを弾いていたので、その時に赤ちゃんがお腹で動く様子で、どの音楽が好きだとか嫌いだとか分かって面白くて、その頃から次第に、赤ちゃんと音楽について考えるようになっていました。生まれてからも、家で楽器を弾いたり、CDをかけてコンチェルトのピアノパートを歌ったりすると、赤ちゃんがすごくはしゃいで喜んだり、ある曲ではそのままよく眠ったり、違う曲を弾くと違うリアクションをするのがとても面白かったのです。他のママたちにも、こういう経験をして欲しい!と思いました。

でも、実際赤ちゃんがいると、コンサートには一緒に行けないし、ベビーシッターにいちいち預けて行くのも高いし、授乳もしていたので赤ちゃんを置いてはいけないし...と、そんな現状の不満をベビーヨガで一緒だった友達に言っていたら、「じゃあ、私たちママたちのためにやってよ!」という話になったのです。」

―最初はどのような形で始めたのですか?

「NCT(産前・産後のグループ)やヨガで出会ったママ友達を招いて、自宅のリビングでお茶を飲みながらカルテットの演奏をしました。ママも赤ちゃんのことを心配せずにリラックスして音楽が聴けるのでとても喜ばれました。子育てをするのはとても大切な仕事だと思っていますが、同時にこうした貴重な機会を逃してしまうのはもったいない、と思い、他のママたちも来られるように、もう少し大きな場所での開催を考えました。それが2010年のことでした。

ハガキ大のチラシと当日のプログラム
ハガキ大のチラシと当日のプログラム

そこで今度は、自宅から近いO2センター(オーツーセンター)というショッピングセンターの中のホールを借りて、同じカルテットをやりました。ホールと言っても、板張りの大きなオープンスペース。そこに、自宅のリビングルームでの演奏会を再現するようにしました。自宅のパソコンで、自分の赤ちゃんの写真を入れて手作りのチラシを作って配っただけだったので、ほんの数組しか来ないのではと思っていたのに、初回に20~30組くらいの親子が集まって、信じられませんでした。

その後O2センターで1か月に一度開催していたのですが、一度に60組ほど(親子で120名以上!)集まるようになり、それでは多すぎると思い、近隣のベルサイズ・パークにも会場を借りて、O2センターとベルサイズ・パークの二か所で毎週一回ずつ開催するようになりました。最近は他のミュージシャンが別の場所でフランチャイズのような形で開催してくれる場所もあり、頻度も全て毎月になりました。今はロンドンと近隣地域、そしてマンチェスターも加えて8か所開催しています。」

―今は、フルタイムで「クラシカル・ベイビーズ」を運営されているのですか?

「現在は、週に2回午前中に自分でクラシカル・ベイビーズを実施。週によっては他の会場にも足を運びます。他に週に2回ほどBBCのオケの仕事が入ります。その他はレッスンやクラシカル・ベイビーズの運営、準備、子育てにあてています。今は子どもは2人ともナーサリーに行っていますが、赤ちゃんの時は一緒に連れて来ていたので、授乳のために『ごめんなさい!あと5分待って!』と皆に言って、それからコンサートを始めたこともありました。」

クラシックコンサートをママの日常に持ってくる
(c)http://www.matsmithphotography.com/

クラシカル・ベイビーズの会場は、高いステージと固定座席があるコンサートホールではなく、教会やショッピングセンターにあるホールやカフェなどのオープンスペース。基本的には、演奏者と聴衆がフラットで垣根のない会場で、前の方には柔らかいマットが敷かれ、その後ろに椅子を並べ、さらに後方にもオープンスペースを作ってある。前のマットには子どもが寝ころんだり座ったり、本やおもちゃに触れながら自由な形で目の前で室内楽の演奏を見たり聴いたりする。大人は、そこに一緒に座って聴くこともできるし、後ろの椅子に座って聴くこともできる。さらに後ろのスペースは、ベビーカーを部屋の中まで持ち込んで置けるようになっている。

親子は、遊びながら前のマットでリラックスして聴いてもいいし、椅子で抱っこしても、授乳しながら聴いてもいいし、赤ちゃんがベビーカーで寝ていたら、そのままベビーカーを傍らに置いたり揺らしたりしながら聴いてもよく、本当に自然なスタイルで聴くことができる。アントニアは、その意図について次のように語る。

―コンサート会場づくりで大事にしたポイントは?

教会のホールにて。マットや椅子の好きな場所で聴ける(c)http://www.matsmithphotography.com/教会のホールにて。
マットや椅子の好きな場所で聴ける

後方にはベビーカー置き場
後方にはベビーカー置き場

「『ママたちを赤ちゃんと一緒にコンサートに連れて行く』のではなく、『コンサートホールをママたちの日常に持ってくる』ことを考えました。わざわざ遠くのコンサートホールに着飾って足を運んで、ホールの椅子にずっと座って、ステージの上を見上げるのではなく、いつものリラックスした環境でコンサートをやる、ということをしたかったのです。

そのためには、赤ちゃんを安心して寝かせられる柔らかい床を作ること、人形やおもちゃなど、赤ちゃんが安心してくつろげるものに触れる状態にしておくこと、コーヒーやケーキをいただきながらリラックスして音楽が聴けること、見やすく好きな位置に簡単に移動して聴けること、そしてベビーカーを会場内に持ち込めることもキーポイントでした。せっかく寝付いた赤ちゃんを起こさずそのまま連れて入りたい時もあるし、ずっと抱っこでは疲れるので、ベビーカーに乗せて腕を休ませられる所も必要だと思いました。既成のコンサートホールに親子をあてはめるのではなく、コンサート会場をできる限りママフレンドリーなスペースにすることをとにかく考えました。」

コーヒーやケーキをいただきながら(c)http://www.matsmithphotography.com/コーヒーやケーキをいただきながら

実際に参加してみて、ベビーカーで赤ちゃんを寝かせたままでも大丈夫なこと、子どもを自由な恰好でマットで遊ばせながら楽しめることは、非常に助かった。年に一度の特別な機会、と気負って赤ちゃんのルーティンを調整しなくても、その時の赤ちゃんのあるがままの状態で、コンサートが聴けるということは、毎週でも毎月でも、時間があいていれば好きな時にいつでも行けるということだ。それが、「日常」ということなのだろう。毎週開催されていれば、その日の赤ちゃんの状態によって、今日は機嫌がいいから赤ちゃんと積極的に音楽にのってみよう、今日は赤ちゃんは寝ているから自分が静かに楽しもう、と色々な楽しみ方ができるものだ。演奏者や他のお客さんとの垣根も低いので、前後にコーヒーを飲みながら談話したり、何度も来ていると友達もできてくる。

ママになっても弾き続けたいミュージシャンはたくさんいる

―「クラシカル・ベイビーズ」のミュージシャンはどうやって見つけているのですか?

「皆、プロのミュージシャンです。オケやその他の演奏活動を通してできた友達はいっぱいいるので、今までのネットワークでも、何千とミュージシャンのコンタクトがあり、やり始めると友達が勧めてくれたりもするので、ミュージシャンの確保には困りません。もちろん、子どもがいなくても、こういう活動をとてもいいと思って出演して、例えば大きな仕事の前に赤ちゃんの前で一度本番をやったりしてくれる人もいますが、同時に、私と同じように、ママになって、フルタイムではできないけれど弾き続けたい、と思っている'ママ・ミュージシャン'たちは実はたくさんいるのです。育児休暇の間も、楽器への感覚を失いたくないからです。そういう人たちには最適の機会で、たくさんの方たちが、熱心にメールをくれたりします。ですから、練習の時も足の間から子どもたちが頭を出しながらやっています。私自身も、子どもが生まれてから慣れるのに時間はかかりましたが、家からできる仕事だし、弾く機会もあるし、とても幸せな仕事の仕方だと思っています。」

―毎月多様な楽器が出てきますね。

「楽器は、毎回違うものを入れようと思っています。ほとんどのオケ楽器、ピアノ、マリンバ、歌、ドラムなどで実施していますが、中でも歌やハープが大人にも子どもにも大人気なのです。金管楽器は、これだけ近くて聴衆と小さい会場では、赤ちゃんには音が大きすぎるのと、1コンサートを埋めるのにちょうどいいレパートリーが少ないので、あまり使いません。使う時は、ホルンを使ったり、他の楽器とあわせてプログラムしたりします。
私ももちろんヴァイオリンでソロ、デュオ、カルテット、と弾きますが、毎回は出ません。時によっては、毎週どこかで弾いている時もあるし、1か月あく時もあります。」

ママ目線ならではのトークや楽器に触る機会もプラス
興味深く近づいていく子も(c)http://www.matsmithphotography.com/興味深く近づいていく子も

「クラシカル・ベイビーズ」のコンサートは、約40分間の室内楽のコンサート。アントニアや他の出演者が間にトークをはさみながら進められる。トークもママ・ミュージシャンならでは。単なる曲紹介だけでなく、その日の会場の赤ちゃんの様子を見て、今の状態で次の曲を聴くとこういう反応があるかも、とか、このように聴いたら楽しいかも、とか、前にこの曲を弾いたら赤ちゃんがどうなったといったエピソードなども話してくれるので、母親も親近感を持って、自分の子どもの反応を楽しみにしながら聴くことができる。トークの口調は、赤ちゃんに語りかけるというよりは、母親同士のトークという感じ。ウィットが利いていて、演奏する方も聴く方も笑顔が絶えない。

コンサート終了後にも少し会場を開放していて、やりたい人はミニ・ヴァイオリン体験をしたり、ピアノを弾いてみたりできる。

連れて来る親も、実際に来るまでは、赤ちゃんがじっと聴いてくれるのか、自分も楽しめるのか半信半疑で、参加してみて初めて印象が変わった人も多いだろう。その点について、ホームページのQ&Aでもエピソードを交えて答えている。

「『子どもたちがじっと座ってちゃんと聴くなんて、本当ですか?』

これは、こんなこと信じられない、と思っていたある父親からの、ツイッターを通して寄せられた本当の質問です。その時は、まだ実際に来て自分の目で確かめる前でした。私がその父親に伝えたように、このコンサートの特徴は、子どもたちがじっと'していなければならない'のではなく、それにもかかわらず、子どもたちは本当に聴くのです。ですから、答えはイエスです。乳幼児向けにコンサートをすることの醍醐味は、彼らが'最も'正直な聴衆だということです。赤ちゃんたちは、お行儀よく座って拍手を'すべきものだ'ということは知らない―つまり、音楽が彼らの心をとらえるか、とらえないか、なのです。

音楽によって赤ちゃんたちの心が鎮まれば、横たわったりママやパパに寄り添い、音楽で興奮したら、子どもたちは踊ったり、膝の上で上下に跳ねたり、ショパンのワルツにあわせてグルグル回ったり、笑ったりジャンプしたり...!でも、ミュージシャンにすっかり魅了されてただじっと聴き入ることが、どんなに多いことかに、驚くと思います。その瞬間は一見の価値はあります。」

音楽に魅了された後は、やりたくなった人はミニ・ヴァイオリン体験をしたり、ピアノを弾いてみたりもできるように、コンサート終了後にも少し会場を開放している。

―ヴァイオリン体験はどういうきっかけで始めたのですか?

ミニ・ヴァイオリンでCome & Try(c)http://www.matsmithphotography.com/ミニ・ヴァイオリンでCome & Try

「始めて1年半くらい経った頃、主人に提案されて小さいヴァイオリンを持っていき、最後に自由にトライできるようにしてみたのです。ほんの小さな赤ちゃんの頃から毎週来てくれていて、ここで初めてヴァイオリンに出会った子が、たった数分ずつヴァイオリンに触れていただけで、すごい吸収力を見せ、2歳半の時に自分もちゃんと習いたいと言いだして、今でも教えている子がいます。以前は、3歳でもヴァイオリンを始めるには小さすぎると思って断っていたのですが、これを通して、小さな子どもが理解できる範囲、できる範囲がいかに広いかを知りました。子どもには'これは難しい'という先入観がないので、難しいフレーズでもタラララ~と簡単に弾いてしまったりします。」

私の息子も、まだハイハイの頃にヴァイオリンを持たせてもらって音を出してもらった時、目の前の自分の持っている楽器から音が出てくるのを不思議そうに見つめ、まだ手も届かないので裏板を支えていた手に振動が伝わったのか、音を出した後にひっくり返して裏板に頬をあててみたりしていた。

毎週来ても飽きないプログラムづくり

―コンサートのプログラムはどのように工夫して組んでいますか?

「毎回、色々な楽器編成とテーマを考えています。ミュージシャンとの間でテーマを提案して、レパートリーを相談します。春・ダンス・古典・ロマン派・ジャズ・映画など。フランス印象派では絵画を見せてアートと音楽を結びつけたりもします。最近まで毎週開催をしていた場所もあり、それでも毎回来る人たちが多かったので、今週はシリアスに、来週は明るく、などと、週替わりで飽きないように変えて工夫しています。

プログラムで大事なのは'流れ'です。例えば一つのプログラムに、シリアスな大曲と小品を時間の都合で無理に混ぜようとすると、流れがよくない。そのように、全体の流れを考えて作っています。」

音楽のレパートリーを通して様々な感情を体験

―赤ちゃんが好む音楽、嫌う音楽の傾向はありますか?

「『クラシカル・ベイビーズ』を始めてみて、曲について多くの発見がありました。赤ちゃんにはララバイ、と連想する人が多いのですが、実のところ、ララバイはうまく行きません。立ち歩いたり、たくさんの子が泣き出して、途中でやめたこともあるほどです。大人は短調を聴くのにも慣れているし、ホワイトノイズなどを聞かずに聴く音を選択したり、感情をコントロールすることができますが、赤ちゃんはそれらをコントロールできないので、マイナーキーが感傷的に働きすぎることがあります。ある意味では、音楽がそれだけ子どもの感情に影響するということを示す事例かもしれませんが。

赤ちゃんが好むのは、明るく生き生きとした音楽です。跳ねたり踊ったりできるようなレビュラー・ビートがあるものを特に好みます。でも、色々な音楽や感情にも触れていって欲しいので、マイナーキーも入れたり、穏やかなものも入れたりと、'サンドイッチ'するようにしていますが、どのくらい含めるかはとても慎重にしています。」

聴衆のターゲットは赤ちゃんと親と両方ということ。産後の母親も感傷的になりやすいことを考えると、この選択は、母親のためにもなっているということだ。

―では、選曲の時にはどのような視点で選んでいますか?

「クラシック音楽は、言語のようなもの。聴いていくうちに、だんだんと慣れ親しんで、理解もできるようになっていくものです。自分のことを考えても、若い頃とは音楽の趣味がすごく変わっている。今は、聴きすぎて嫌になってしまうけれど、当時はものすごく好きだったものもあります。ですから、その昔、自分がクラシックを聴き始めた頃に、どんな音楽が好きだったか、その曲のどんな所に自分は魅力を感じたのだろう?と、常に思いだしながらプログラムを考えるようにしています。本当に幼い頃の好みは、息子のリアクションから学んでいます。

赤ちゃんは先入観がないので何でも聴けるという説もありますが、例えばコンテンポラリーにも色々あって、たくさん聴くうちに理解を積み上げていって、初めておもしろさの分かる類の音楽もありますが、色々な異なったスタイルの音楽があるので、現代音楽の中でも、ちゃんと選べば赤ちゃんにもふさわしいものがたくさんあります。また、たまにはワイルドカードとして、ばりばりの現代音楽を出すこともあります。そうやって、少しずつそういう言語に触れていくことで、そこから人は枝葉を伸ばしていくことができるのです。

慣れていないから、聴いたことがないからと言って、好きにならないとは限りませんし、単純化したものだけを全てスプーンで口に入れてやるようなやり方ではいけないと思います。子どもだましにレベルを下げるのではなく、常に変化やチャレンジを適切に与えられるようなプログラミングをするべきだと思っています。ですから、皆が知っているかどうか、という'ポピュラー'かどうか、というのは判断に適当な用語ではありません。大事なのは、「無理のないハーモニーか」「感情的にしっかり訴えるものがあるか」、そこから自分なりに枝葉を伸ばせるような音楽言語の基礎を与えられているかを考えて判断することです。また、エリアによっても、客層が違うので、好む音楽の傾向も異なってきます。」

クラシック音楽体験を人々の日常の一コマにしたい

―「クラシカル・ベイビーズ」に込められた願いは?

(c)http://www.matsmithphotography.com/

「クラシック音楽は、芸術的な感覚、読む力、異なる言語の習得、数学的なリズム、演奏することによる左右の手と脳の調整能力と、まさにバランスのよい脳の発達につながるあらゆる力を育みます。まだ演奏できない赤ちゃんでも大人でも、音楽を聴くことで、色々な感情に触れ、自分の感情を理解したり、表現したり、他人の感情と共感したりすることで、人との関係を築く基礎を作ることができます。全ての人に音楽家になって欲しいというのではなく、音楽がその人の生活の中で、日常的にいつでもアクセスできるものであって欲しい、と思うのです。私も、普通の一人のママで、たまたま今演奏しているというだけ。ドレスアップして、高尚な場所に行かなくても、誰でも近所でジーンズで聴きに行ける、そんな風に、クラシック音楽を全く普通の環境の中にある日常的なものにしたいのです。」

手元に保管してあった「クラシカル・ベイビーズ」のプログラムを見てみると、子どもが2歳になる前まででも、10枚以上あった。こんな頻度で同じコンサートに通うことは、滅多にないのではないだろうか。それだけ、'コンサートに行きやすい'と感じていたということの表れであろう。

執筆:二子千草


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