ロンドンレポート

ベビーと一緒にクラシックコンサート No.1 ベビーコンサートになぜニーズがある?

2014/04/14
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ベビーと一緒にクラシックコンサート ~No.1 ベビーコンサートになぜニーズがある?
ベビーと一緒にクラシックコンサート (c)Petra Semerdjiev

ロンドンでも近年になって、赤ちゃんを対象としたコンサートが増えてきた。これまであまり開拓されてきていなかった分野だが、いざ開催されてみると、どれも毎回満員となるほど人気がある。なぜ、生まれたばかりの赤ちゃんを対象としたコンサートが注目を浴びるようになってきたのか?一口に赤ちゃん向けのクラシックコンサートと言っても、実際参加してみると、実は少しずつ異なる特徴を持っている。そこには、主催者の様々な想いが反映されているからだ。どんな点が人気を博しているのであろうか?具体的な体験談も交えながら、コンサートの模様、主宰者の話とを併せて、いくつかの事例を見てみよう。

コンサートホールに赤ちゃんを連れて!
ベビーと一緒にクラシックコンサート1

「子どもが参加できるクラシックコンサート」と文字面で考えると、クラシック音楽の世界でも、世の中ずいぶんと増えてきたように思われる。しかし、やはり子ども向けファミリーコンサート、というものは、企画の内容が理解できるか、楽器や声を使った参加型に十分参加可能か、他の年齢の子どもと交わっても危なくないか、耐えられる刺激や音楽の長さの違い、ベビーカーやおむつ替えのスペースなどの必要な設備の違いなど、といった観点から、多くは7,8歳、もしくは5歳以上が対象というものが多く、生まれた年から参加できるクラシックコンサート、しかも「入場可能」なだけでなく、赤ちゃんの時期をメインにしたコンサートは、と考えると、ほとんどないことに気づく。

なぜ赤ちゃん向けのコンサートは発展しなかったのだろう?いわゆる普通のクラシック音楽のコンサート、さらには、いわゆる子供向けコンサートというものとも、赤ちゃんの日常はそぐわない、と思われてきたからだろうか。もしくは、「クラシックコンサートに行く」などと言うことは、赤ちゃんにも母親にも、その時期には必要ないことだと思われているのではないだろうか。

これまでロンドンで、様々な子ども向けの音楽イベントやコンサートを見てきたが、自分で子どもを持って初めて、「子ども向けコンサートは、ロンドンでは充実していると思ったけれど、ふたを開けてみれば、子どもを産んですぐに参加できるコンサートは、ほとんどない。あと数年も、クラシックコンサートに行くのを待たなければならないの?」という現実に気づき、コンサートホールのパンフレットやウェブサイトを見てはため息をついていた。

産後にコンサートに行くのは何が大変?
ベビーと一緒にクラシックコンサート1

産後、コンサートに行きたければ、子供を預けて行けばいいではないかと言われる。しかしコンサートのほとんどは夜に開催のため、子どもを預けて行くのは容易ではない。予期できない子どもの体調や機嫌、その日のお昼寝のタイミングによっても外に出られる時間は前後し、ましてや母乳育児をしていたら、特に機嫌の悪くなる夜の時間に、ホールへの往復も含め数時間も他の人に預けるのは、至難の業。祈る思いで、どうしても行きたいコンサートに向けて、数か月前からチケットを予約し、ベビーシッターを予約し、様々な練習をして備えても、迎えた当日、熱を出されたら全て水の泡。そしてそう簡単に「じゃあ次回を期待しよう」とは言えないのである。

特に、赤ちゃんの最初の1、2年は、成長めまぐるしく、1,2週間で日々のルーティンががらりと変わり、次々と新しい難関がやってくる。成長の個人差も激しいので、予測のつかない数か月後のチケットなど、怖くて買えない、というのが本音だ。もう一つ本音を付け加えれば、携帯のつながらない間に、子どもがどうしているかが気になり、感じなくてもよい後ろめたさを抱え、万が一のことがあっても遠いコンサートホールからはすぐに帰れない怖さもあり、没頭して楽しめているかと言ったら、そうではない。どうせ行けないなら、見るだけ辛い、と、送られてくるホールのパンフレットにも、目を通さなくなった。

だからと言って、大好きだったクラシックコンサートを、子どもが成長するまで数年、兄弟ができたらさらに数年、本当に諦めなければならないのだろうか?それは、自分にとっても、子どもにとっても、音楽業界にとっても、いいことなのだろうか?その間に、自分もクラシック離れをしてしまうかもしれないし、子どもも、一度も行ったことのないクラシックのコンサートに、夜同行できるくらい、つまり流行のポップミュージックにはまるくらいの歳になって、いきなり大人向けの長いクラシックコンサートに連れて行かれても、好きになるどころか、逆効果にもなりかねない。むしろ、仕事を持つ母親も、生後数か月の間こそ、赤ちゃんと一緒に出掛けて色々な体験ができるし、子どもも、保育園や幼稚園に通い出す前が、平日自由に様々な体験をすることができる。生後1,2年というのは、そうした希少な時期なのである。

今のうちに、子どもを一緒に連れて行ける、気軽に行けるクラシックコンサートが身近にあったらいいのに...。童謡や子ども向けの音楽もいいけれど、普通のクラシック音楽も生で聴きたい、子どもにも聴かせたい。そんな想いを募らせて、パソコンに向かえる限られた時間を駆使して、機会を探したものだった。

ベビーと一緒にクラシックコンサート1(c)Ada andruszkiewicz

数少ない赤ちゃん向けコンサートは、こうした問題に、自分が子どもを持って初めて気づいた主宰者が奮起して立ち上げたものがほとんどだ。従って、コンサートのあり方も、その主宰者側の想いを反映して、少しずつ特徴が異なっている。ここに、ロンドンで乳幼児向けに開催されているクラシックコンサートをいくつか紹介したい。特に今回は、特別企画や年に一度、といったような大掛かりなコンサートではなく、毎週、毎月、毎タームなどと、定期的かつ日常的に開催されているクラシックコンサートに注目する。

次回よりご紹介するのは、ウィグモアホール主催の「フォー・クライング・アウト・ラウド!For Crying Out Loud!」と「トドラー・ボップToddler Bop」、そしてもう1つは「クラシカル・ベイビーズClassical Babies」だ。

執筆:二子千草


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