バービカンセンターの新体制:クリエイティブ・ラーニング 第1回
バービカンセンター外観
ロンドンの最もメジャーなコンサート会場の一つと言えば、バービカンセンター。ここの教育部門が2009年秋、ギルドホール音楽院と共同して、「バービカン/ギルドホール・クリエイティブラーニング」という組織を新しく発足させた。バービカンにとって、この新しい組織はどういった位置付けになるのであろうか。
バービカンセンター:(Barbican Centre, Silk Street London, EC2Y 8DS)[地図]
クリエイティブ・ラーニング:The Barbican/Guildhall School Creative Learning Department
バービカンセンターは、ロンドンにあるヨーロッパ最大の総合アートセンターで、中には1949名収容のバービカンホール、1166席のバービカンシアター、200席のピットシアター、シネマ、2つのアートギャラリー、7つの会議室、2つの展示スペース、公立図書館、レストラン、カフェが入っている。バービカンホールでは、レジデント・オーケストラのロンドン交響楽団の他、世界の有名なオーケストラやアーティストたちが代わる代わるに腕をふるいにやって来る。そこで開催される、年に約3700のイベントへ総計約86万人が、そしてオープンスペースやレストラン、図書館等の機能を利用しに、さらに多くの人々が日々訪れるのである。
センターの構成を見ても分かるように、バービカンセンターの活動は、総合アートセンターとして、大きく音楽、演劇、映画、美術、その他クロスアート的な最先端の現代アートにと大きくまたがっている。各イベント数と動員数、収入の配分は次の通り。
(Barbican annual report: 2009-2010より)イベント構成(2009-2010シーズン) | ||
---|---|---|
イベント数 | 動員数 | |
音楽(Music) | 261 | 351,217 |
演劇(Theatre) | 333 | 134,296 |
美術(Art) | 5 | 169,928 |
映画(Cinema) | 2,860 | 191,051 |
教育(Creative Learning) | 220 | 16,453 |
合計 | 3,679 | 862,945 |
バービカンセンター入口
戦後廃墟となったロンドンの復興の目的で1950年代に構想が始まったバービカンセンターは、1982年3月3日に開館し、間もなく30周年を迎える。シティ・オブ・ロンドン(City of London)により場所の提供を受け、また毎年収入の50%以上の資金的な援助も受けている。収入源としてはこの他、アート関連事業の直接収入に加え、アーツ・カウンシル・イングランド(Arts Council England)その他のトラストや基金、企業や個人の寄付などから資金調達をしている。
2009年秋に発足した新体制:バービカン/ギルドホール・クリエイティブ・ラーニングは、このバービカンセンターに12年前から存在していたバービカン・エデュケーションの部門と、地理的にも隣にあるギルドホール音楽院のコネクト(参照)とが合体してできた組織だ。ギルドホール音楽院のショーン・グレゴリー氏がダイレクター(Director of Creative Learning)として就任し、クリエイティブ・ラーニングの17名のチームが、バービカンとギルドホールの双方の教育活動を運営する。
バービカン・エデュケーション
ギルドホール・コネクト
バービカン/ギルドホール・クリエイティブ・ラーニング
「次世代の国際的アート&ラーニングセンターのモデルを作る」という長期目標を掲げたクリエイティブ・ラーニングは、「音楽、演劇、美術、映画、ダンス、文学というあらゆるアートジャンルに関わる、世界トップクラスの創造的な教育プログラムを開発する」ことを通じて、「新しい聴衆層にアプローチし、アート全体の体験に新たな価値を加えるクリエイティブ・ラーニングの力を証明する」ことを目的としている。
「アートとの生涯に亘る深く長い関係を動機づける」という目標の対象は、広くアーティスト、愛好者、アートの仕事に携わる人、聴衆とそれらの可能性を秘めている全ての人々である。そうした意味で、今ではバービカン全体の中でクリエイティブ・ラーニングは、ただアートプログラムから派生した一部門という意味以上に、「全てのバービカンのプログラムの根底を支えるもの」、という見方をされているのが印象的だ。
―次回は、クリエイティブ・ラーニングの音楽プロデューサーにインタビュー。
取材・執筆:二子千草