ショパン国際コンクール決勝・3日目
いよいよ決勝の最終日を迎えた。泣いても笑っても、これが最後のステージである。2週間以上に及ぶ予選を経て10名がファイナルに残り、今日の3名で全てのステージが終了する。誰が最もショパンの精神に近づけたのか、誰が最もピアニストとして印象づけることができたのか・・・?実力伯仲し、大混戦となった今回のショパンコンクール。最後まで目が離せない展開となった。
既に最終結果が出たが、最終日の模様はこちら。
ルーカス・ゲヌーシャス*が予選リサイタルで見せた彫りの深い音楽の作り方は、協奏曲でも変わらない。荘厳な空気を纏った力強い第1テーマに続いて、物語を語り聞かせるような第2テーマの入りは印象深い。テンポがやや速めで少し前のめり気味にオーケストラと対峙している印象があるが、ショパンの繊細さや、そこに収まりきれない密かな激情が音楽の中で一体化して表出されるようである。第2楽章は対照的にやや翳りある美しいメロディの中に、切迫感や焦燥感といった感情が伝わってくる。第3楽章ではクラコヴィアク風のリズム特性を強調しながら表情をつけていく。ゲヌーシャスの音楽へのアプローチは、まるでミケランジェロが彫刻刀で一気に対象物の魂まで彫り出すかのようで、若く雄々しいエネルギーに満ち溢れている。(使用ピアノ:スタインウェイ)
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フランソワ・デュモンは、やはり落ち着いた深い思考に基づく演奏が魅力である。協奏曲第1番第1楽章の展開部のテーマも成熟した歌い方で、かつオーケストラとも上手にコミュニケーションを取りながら、共に音楽を作り上げる。第2楽章は美しい旋律に潜む焦燥感や哀切、憧憬の念など、様々な想いを汲み取りながら、一本のメロディに美しく織り込んでいく。第3楽章は落ち着いたテンポで、拍もきちんと刻み、最後までオーケストラと一体化して一つの軌跡を描きながら、呼吸が乱れることなく美しい協奏曲を見せてくれた。(使用ピアノ:スタインウェイ)
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エレーヌ・ティスマンは、10名中2名のみ選んだ協奏曲第2番。慎重に、かつ静かな情熱を帯びた音楽の運びが印象的である。特に第2楽章のピアノ主題は美しく、夢想のような瞬間が続く。オーケストラをバックにしても過度に情熱的にならず、節度と品のある歌い方は彼女らしい。第3楽章はリズムの特性を意識しながら音楽を進めるが、指揮者ともしっかりアイコンタクトし、オーケストラとも息を合わせる。最後にやや疲れが出たのが惜しいが、高い集中力を発揮して彼女のステージを締めくくった。(使用ピアノ:ヤマハ)
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<会場でキャッチ!>
コンサート・マスターのピョートル・セジェルスキー氏。「今年7月に日本で演奏しました。もう日本には20回以上行っています。デハマタネ!」
惜しくもファイナル進出ならなかったメイティン・スン君。街を歩いている最中にキャッチ。「コンクール前にパリやノアン、ロンドンなど、ショパンが訪れた場所を巡って写真撮影しました。コンクールが終わってニューヨークに戻ったら、写真展を開く予定です。」自分で撮影した写真パネルを持ってパチリ。
*Lukas Geniušasの読みカナをルーカス・ゲニューシャスとさせて頂きました。ご了承下さいませ。