ショパンコンクールレポート

ショパン国際コンクール決勝・1日目

2010/10/20

第16回ショパン国際コンクールも3週目に入り、いよいよ決勝の時を迎えた。いずれも素晴らしい音楽性を持つピアニスト10名が出揃い、まさに大混戦!の様相を呈してきた。初日の18日は、17時半に開場。会場を埋め尽くした聴衆は、ステージにピアニストが登場し指揮棒が振られる瞬間を今や遅しと待つ。各ピアニストが最後の力を振り絞って臨んだ決勝のコンチェルトは、いずれも熱演が続き、客席から拍手喝采とブラボーが飛び交った。まずは初日の模様から。(ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、アントニ・ヴィット指揮)

 

20101018_bozhanov2.gif予選のリサイタルで類まれなる芸術性を見せたエフゲニ・ボジャノフ。協奏曲はダイナミズムを持って果敢に取り組む。高音の響きも美しく、様々な表情を含むフレーズは、彼の呼吸とリズム感によって微細に色彩と陰影を変化させながら、音楽を前へと進めていく。音楽との対話、そしてオーケストラとの対話にも高い能力を示す。音楽の中での自由さや開放性はリサイタルの方が勝るものの、最後まで独特のインスピレーション溢れる演奏を極めて高いレベルで貫いた。(使用ピアノ:ヤマハ)
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 予選から圧倒的な美音で強い印象を残してきたダニール・トリフォノフ。彼のきわめて大きなフレージングも印象に残っているが、協奏曲第1番第1楽章は緩やかなテンポから始まり、華やかになるにつれて増していくエネルギーとともに幾分速まっていく。第2楽章は純粋で透明感ある音色で、ショパンの心像風景を投影していく。第3楽章はロンド主題の弾むようなリズムの中で、華麗なる美を表現していく。最後までオーケストラと互角に音楽を推進していくエネルギーに満ち溢れていた。(使用ピアノ:ファツィオリ)
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リサイタルで優れた知性と構築力を見せたミロスラフ・クルティシェフ。協奏曲第1番も拍をきちんと刻んでオーケストラと上手にあわせながら、冷静さを保ちつつ音楽を進めていく。第2楽章は洗練の中にも陶酔しすぎない美意識が、豊かな歌となって現れる。第3楽章は軽快さと陽気さを交えて進んでいくが、常に余裕を感じさせる演奏でオーケストラとの呼吸も合う。(使用ピアノ:スタインウェイ)
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20101018_Wakarecy.gifパヴェル・ヴァカレツィはフレージングに独特の呼吸があり、特に協奏曲2番第2楽章ラルゲットは感傷的や優美というより多少毒気を含んでおり、オーケストラをバックにフレーズを自在に歌いまわす。第3楽章も二次予選で見せたマズルカのような妙味や茶目っ気を感じさせ、音楽を多面体に見せる。オーケストラとやや合わないところがあり、全体像がぼやけることもあるが、所々に面白い音楽性が潜み、聴衆をつかむ力がある。 (使用ピアノ:スタインウェイ)
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<会場でキャッチ!> ファイナル聴衆の皆さん

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三次予選から視察されている岡田敦子先生(東京音楽大学教授)と、ジュネーブ在住の音楽学者ボジェナ・シュミット・アダムチクさん。ボジェナさんは、ポリーニが優勝した1960年からショパンコンクールを視察。40年以上に渡りショパンの遺作研究を続け、ご自身でも多くの自筆譜を所蔵している。

 

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「ポーランド市民交流の会」代表の影山美恵子さんと、ポーランド在住8年目の栗原みほさん。30名ほどのお客様を日本から引率。この日はアンジェイ・ヤシンスキ先生によるマズルカのレクチャーを鑑賞。(ショパン音楽アカデミーにて)

 

101018_Wanda.gifショパンコンクールに通い続けて5回目という、ワルシャワ在住のヴァンダさんご夫妻。「ショパンの音楽は素晴らしいです。誇りに思っています」


ピティナ編集部
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