ショパンコンクールレポート

ショパン国際コンクール・第一次予選結果の感想

2010/10/09

101007_lobby5.jpgのサムネール画像昨日、第一次予選の結果が発表された。予定時刻を3時間遅れての結果発表となったが、第一次予選は総じてレベルが高く個性的な演奏も多かったため、ボーダーラインをどこで引くかが難しかっただろうと思われる。おおよその印象としては、演出効果の高い演奏、構成がよく練られた演奏、そして個性的な演奏をしたピアニストも多く選ばれている。photo© Narodowy Instytut Fryderyka Chopina

101007_jurymembers.jpg 独特のインスピレーションと異彩を放つユリアナ・アヴディエヴァ(Yulianna Avdeeva)エフゲニ・ボジャノフ(Evgeni Bozhanov)、洗練された構築力を示したダ・ソル・キム(Da Sol Kim)ニコライ・コジャイノフ(Nikolay Khozyainov)ヒュン=ミン・ス(Hyung-Min Suh)ミロスラフ・クルティシェフ(Miroslav Kultyshev)、プログラム構成にも工夫があるペン・チェン・へ(Peng Cheng He)、永野光太郎、情熱的に雄弁に弾くアナ・フェドロヴァ(Anna Fedorova)、色彩感や陰影ある音色で奥行ある世界を描くフランソワ・デュモン(François Dumont)シャン・トン(Xin Tong)ダニール・トリフォノフ(Danil Trifonov)、正統派に近いインゴルフ・ヴンダー(Ingolf Wunder)、その中で大崎結真さんや片田愛理さんなどは繊細さが際立つ。

また即興演奏が得意だったショパンの、自由で即興的な部分を強調したかのようなピアニスト、中でもアンドリュー・タイソン(Andrew Tyson)メイ=ティン・スン(Mei-Ting Sun)などは、大変ユニークな個性が光った。いわゆる従来のショパン像とは異なるが、一ピアニストとしての個性的な音楽解釈や表現方法が重視された結果と思われる。

101007_jitsukawa.gif一方でエリック・ズベー(Eric Zuber)實川風さんなど、正統派のピアニストが二次進出できなかったのが、とても残念に思った。ショパンの持つ孤高の美意識を映し出すような、磨かれた美しい音と端正な演奏は、心の中にとどめておきたいと思う。

 

またその他の日本勢も健闘した。しなやかな感性を持つ宮崎翔太さん、大胆な音楽作りをする工藤奈帆美さん、より微細な心情表現の可能性を秘める佐野隆哉さん、清涼感ある音質が魅力の野上真梨子さんなどを始め、ここまで真剣に練習を重ね、健闘された全てのピアニストの皆さんにエールをお贈りしたい。ショパン生誕200周年の記念すべき年に、ワルシャワ・フィルハーモニーの大ステージで演奏したことは一生の誇りになるだろう。

 

写真上)多くの聴衆からサインを求められる實川風さん。同世代にも大人気!

101007_lobby1.gif写真下)左より田辺博美先生、石井なをみ先生、小塩真愛さん、二本柳奈津子先生、片田愛理さん、實川風さん。二本柳先生は、「一次予選5日間全員の演奏を聴いて、何年分もの収穫がありました。音色の変化も普段から意識していましたが、ここまでやらないといけないんだと思い、ピアノという楽器の可能性を感じることができました。特にロシアのニコライ・コジャイノフが、自然でいて心に残る理想のピアニストでした」とのコメントを寄せて下さった。

 


ピティナ編集部
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