第30回 マズルカ第31番(3つのマズルカ Op.50 第2曲 変イ長調)
●3つのマズルカ Op.50 第2曲 変イ長調
〔A〕・・・クーヤヴィアク
b 29~39小節 ヘ短調
a 40~59小節
b 68~75小節 変ロ短調
a 76~83小節
31~32歳のショパンがノアンの地に満足するため息、また10代~20代前半の頃を懐かしむ姿、とでも言いましょうか。溌剌とした第1曲に対し、第2曲は初老の雰囲気さえ漂う穏やかなマズルカです。
きれいな3部形式の楽譜で注目すべき点は音程。上声が属音のEs音から2度、3度、5度、7度と開いていく序奏は、まるで花が自らの花弁をゆっくりと広げていくかのようです。続くメロディー〔A〕は順次進行が主体となりますが、上品さの中にもショパンのこだわりが感じられるのがやはり音程です。マズルカのアクセントとなる2~3拍目に2度と3度の音程が意識的に使われています。(9小節目のEs~F、そのヴァリエーションとなる17小節目のEs~G、冒頭2小節のモチーフとリンクさせています。この3つの音が曲のあちこちに顔を出します。)
〔B〕の24小節間は、終始一貫して「タンッタタンタン」のリズムが使われています。メロディーはここでも2度と3度の音程が中心となっていますが、弱音(P)の中で弾むようなリズムと対照的な性格を同居させて不思議な緊張感を生み出しています。内に秘めた喜び、自分だけが知る小さな幸せ、という表現が適当かわかりませんが、ショパンにとって幸福感というのは声を大にして誰かに伝えるものではなく大事にしまっておきたいものなのだ、と筆者は感じてしまうのです。
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。