第23回 マズルカ第24番(4つのマズルカ Op.33より 第3曲 ハ長調)
第3曲はエレガントで女性的な(と言うと語弊があるかもしれませんが)マズルカです。郷土のリズムを明るく男性的に表現した第2曲とは対照的なムードですが、どちらも素朴さを湛えていることに変わりはありません。多くの人との出会いの中で大きな作品を手がけながらも、マズルカには故郷に対する愛情や懐かしい気持ちを込めずにはいられなかったショパンの思いが伝わってきます。
〔A〕 1~16小節・・・クーヤヴィアク
〔B〕 17~32小節・・・マズール
〔A〕 33~48小節・・・クーヤヴィアク
この楽譜を眺めていると、作品を彩るエッセンスが2つあるように思われます。一つは、各部分で1ヶ所ずつ登場する違う色の和声(サブドミナント)。全48小節(3部形式)のほとんどが度(属七)と度の和声のみで進行する中、この3ヶ所にはショパンの懐古の情が聴こえるようで愛おしさを感じます。もう一つは、メロディーに含まれたたくさんの非和声音。半音階的な動きがシンプルなハーモニーに陰影を与えとても魅力的です。
出だしのクーヤヴィアクは2オクターヴ内という音域の狭い中で奏され、醸し出されるその親密な雰囲気はまさにサロン風です。バスに「ソ―ド―ソ―ド」と空虚5度の響きが続く中、上から薄いヴェールをかぶせるかのようにメロディーが優しく歌います。続くマズールでは、エンハーモニック(異名同音)で変イ長調に転じ雰囲気がガラリと一変。貴重なサブドミナントの和声で始まると、両手共に動きと力強さが加わって自由を得たかのように伸びやかに歌い上げます。そして再びクーヤヴィアクに戻る箇所が美しい!マズールの緊張感が解けるようなアルペジオでつながれ、夢かまことかわからなくなるような・・・その境目を途切れることなく演奏するよう、マズールの最後の2小節からクーヤヴィアクの初めのフレーズまでスラーが書かれています。演奏者としては手がしびれる瞬間です。
Semplice(素朴に)の中にも豊かな色合いが盛り込まれた、味わい深い作品です。
東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。