第22回 ソナタ第15番 Hob.XVI/13 ホ長調
可愛らしく、遊び心いっぱいの曲です。4分の2拍子の1楽章は、冒頭に示されるモチーフが楽章を支配し、至る所で付点のリズムが聞こえてきます。2楽章は穏やかな旋律が現れますが、トリオでは一転し、ホ短調の不安げな雰囲気になるものの、終楽章では再び4分の2拍子に戻り、華やかで勢いのあるPrestoのテンポで幕を閉じます。
どの曲にも必ず書かれている、曲の冒頭の楽語。曲の題名の次に目がいくこの楽語は、どの作曲家もこの楽語に特別な思いを込めているので、この言葉によって曲のイメージが大方決まるといっても過言ではありません。 では、ハイドンのピアノソロ曲で一番使われている速度表示は何でしょうか。それぞれの曲の冒頭に示されている楽語を調べてみたところ、最も多いものはAllegroで、特に初期の作品に多く書かれていました。
次に、ModeratoとPrestoが2番目に多く、今回の音源、第15番も、1楽章がModerato、3楽章がPrestoで書かれています。もちろんこの曲以外にも、ハイドンの曲を思い返してみると、たくさんありますよね。Prestoは3楽章によくでてきます。
調べてみると、ハイドンが実に多くのテンポ表示を使い分けていることが、改めてわかります。上記以外に特に目立った楽語は、
Andante
Allegro Moderato
Allegro con brio
Andante con espressione などでした。
Allegro Moderatoも、ハイドンがたくさん使用したテンポ表示で、なんと10曲もこの速度表示で書かれています。この楽語をここまで頻繁に使った作曲家を、私は他に思いつきません。きっとハイドンは、この楽語に何か思い入れがあったのでしょう。Andante con espressioneは、2曲に使われていますが、どちらも名曲です。
あと、ハイドンはMenuetが大好きなようです。1楽章→Menuet-Trio→Finaleという形式の曲がたくさんあります。特に交響曲には必ずといって良いほど3楽章にメヌエットをもってくるのですが、ハイドンのMenuetは幸せな雰囲気の曲が多いです。私は大好きです。
珍しいものは、PrestissimoやAllegretto innocenteなどでしょうか。innocenteと同語源のinnocentementeという楽語も、ハイドンのHob.XVI/37ニ長調の3楽章に出てきます。素朴で、無邪気といった意味合いをもつハイドンの曲にピッタリの言葉ですが、あまり使われない珍しい楽語です。でも、私はハイドンが使ったこの言葉に強い愛着を感じ、とても気に入っています。
1987年3月22日生まれ。
1996年 ピティナ・ピアノコンペティションB級奨励賞。1998年 第15回教育連盟ピアノオーディションA部門入賞、同入賞者演奏会出演。2000年 ピティナ・ピアノコンペティションD級銅賞。2001年 第17回かながわ音楽コンクールユースピアノ部門中学生の部第1位、総合第2位、神奈川新聞社社長賞受賞。トップコンサートにて神奈川フィルハーモニー管弦楽団と共演。2003年 第1回カワイ主催ロシアン・ピアノスクール in 東京受講、受講生選抜公開演奏会出演。2004年 第5回ショパン国際ピアノコンクール in Asia、アジア大会奨励賞。第9回浜松国際ピアノアカデミー受講。ピティナ・ピアノコンペティションG級金賞、併せて東京都知事賞、讀賣新聞社賞、ヒノキ賞、王子賞、洗足学園前田賞受賞。第2回カワイ主催ロシアン・ピアノスクール in 東京受講、受講生選抜公開演奏会出演。2005年 フランスのMoulin d'Andeにて行われたマスタークラス受講。アメリカにて行われたジーナ・バックアゥワー国際ピアノコンペティションYoung Artist部門第6位。第3回カワイ主催ロシアン・ピアノスクール in 東京受講、受講生選抜公開演奏会出演。
2006年 ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、聴衆賞受賞。併せて文部科学大臣賞、讀賣新聞社賞、ミキモト賞、王子賞、三菱鉛筆賞受賞。
幼少の頃より現在に至るまで江口文子氏に師事。モスクワ音楽院にて、パーヴェル・ネルセシアン教授に師事。これまでに、佐藤俊、日比谷友妃子の各氏に師事。