ソロ部門・デュオ部門

出演者インタビュー(Pre特級金賞:嘉屋 翔太さん)

第2部
16.嘉屋 翔太 /Pre特級[金賞]
当日の演奏曲目
  • ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61「幻想ポロネーズ」
音楽と学業の両立
Q:開成中学・高校出身ということで、進路に迷いはありませんでしたか。
高一までは、悩みあぐねていました。もちろん東大を目指すという選択肢はありましたし、勉強とピアノの両立という道も探っていましたが、高二で参加したPTNAをきっかけに東京音大のエクセレンスを目指す意思が固まりました。
2017年全国大会G級で銀賞を受賞
作曲家の意図を「見破る」
Q:譜面について、ショパンの自筆譜や版の異同から、どんなことを読み取り、演奏に活かしていますか。
ショパンのように広く知られた作曲家であれば、二つ以上の版と自筆譜を見比べるのは容易でありかつ大変有意義なことだと考えています。
研究されればされるほど、細部にわたって音、アーティキュレーション、デュナーミク等の相違が生まれます。原典版を重視することは大切ですが、曲によっては作曲家自身が出版された自作品にあとから指示を書き加えたものも存在します。
では最終的に何を正しいと判断するのか。それは「作曲家がどこを強調したかったのか見破る」ことだと思います。
鍵盤に触れる一時を大切に
Q:ピアノを弾いていて良かった、と思う瞬間はどんな時ですか。
2019年後半は、自宅にピアノがありませんでした。その現実は時間が経つにつれてより重くのしかかってきました。 殊に年末年始にはどこもピアノに触れる事のできる環境がなく、ひどく気が滅入る時もありました。 だからこそ、ピアノに触れるその度に ─自分の中に蓄積された内なる音が具現化される瞬間に─ 強く心が動く。 毎日なんとなく鍵盤を叩いているのでは決して得られない感覚です。
出演者からの質問!
永田 怜さん(D級)から
Q:僕は来年から中学生になります。これからは勉強も大変になると思うので、今までのようにピアノの練習時間が確保できるか、心配な部分もあります。
嘉屋さんは開成中高ご出身とのことで、中高生の頃は特に学業とピアノの両立が大変だったと思いますが、 どのように両立されていたか、練習のやり方など工夫されていたことがありましたら教えてください。

音楽と学業の両立の方法は、僕自身中高の間何度も考えました。 学校の勉強をすることは学生の本分です。やらなければならないことを一つ一つこなしていくのに加え、ピアノの練習時間を捻出しなければなりません。 実際のところ、小学生と同じ長さの練習時間を確保するのは大変困難です。僕はテスト対策で全く弾けない日もありました。 それでも一日のうちで音楽のことを考える時間があれば良いのです。「鍵盤に触れている=音楽に取り組んでいる」のではありません。

そして僕が一番大切だと思うのは、音楽にしろその他の学問にしろ「一日で達成できるものはない」ということです。
人間の脳は休んでいる間 ─特に睡眠をとっている間─ に記憶が定着します。即ち、練習も勉強も「二日」が最小単位ということになります。
何か壁にぶつかった時、何時間もその問題に挑み続けるのではなく(もちろん長時間の挑戦は大事ですが)、「明日もう一度挑戦してみよう」と区切りをつけられるようになることが肝要です。

そして、挑戦している間に自分の目的を見失わないこと。
ピアノであれば「自分は何のためにこの練習をしているのか」。
その自問自答の繰り返しが、限られた時間を有意義に使うための最良の手段ではないでしょうか。
全国大会の演奏

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