ロシア音楽の重厚さに惹かれ

F級
太田糸音 さん

★演奏曲目★

プロコフィエフ:4つの練習曲 Op.2(全曲)

◆ピアノを始められたきっかけは何でしたか?

もともと母がピアノの講師、父も歌の指導をしていたので、常に音楽とともにあるような家庭環境でした。ですので、幼いながらも自主的にピアノを始めようと思いまして。3歳の時に音楽教室に通い始めました。

◆その年齢で自分から始められたというのは、珍しいですね。ピアノを続けていくうちに、今、教わっている武田真理先生と出会われたのでしょうか。

そうですね、武田先生に出会ったのは、ピティナのアドバイスレッスンを受けた小学3年生のときで。本当に「この先生に習いたい!」って強く思いました。ありがたいことに、2回目のアドバイスレッスンの際に先生からお声かけいただき、それ以来、レッスンを受け続けています。

◆ピティナを通じての出会いだったのですね。すると、コンペティションには、それ以前から出場されていたのでしょうか?

はい、小学1年生のときですね。同じヤマハに通っている友人がみんな、ピティナを受けていたんです。何も分からないままでしたけれど、とにかく自分も受けてみよう、と思いました。翌年からは、全国大会に進出することもできるようになって……、祝賀会で友達に会ことも楽しみの一つで、毎年受けています。

◆ここでも自分自身の意思で「受ける!」という道を選ばれたのですね。すごい行動力だと思います。すると、2013年度のコンペは、その流れで受けられたのでしょうか。

今回についていえば、実は、先生から、「今年はコンペをお休みして、海外のマスタークラスなどを受けてみるのはどうか」というお話をいただいていたんです。でも、私にとって、コンペは毎年欠かさず出場して積み上げてきたもので、出ることが当たり前になっていました。だからせっかくのお話だったんですけれど、お断りし、コンペに出場しました。

◆それは本当にありがたい限りです。迷いもあったかと思いますが、そんな中で、コンペ課題曲は、どのようにして選択されたのでしょうか?

現代スタイルは課題曲を一通り聴いてみたんです。いちばん惹かれたのが、カバレフスキーのピアノソナタで、「これは絶対に弾きたい!」と思ったので、これに決めました。続いて、バロックですが、バッハの平均律は、調性感あふれる自分の好きな曲でした。先生からも、「バッハにとってロ短調が特別な意味を持っている」というのを始めとして、内容の濃さについてお話を受けましたので、この曲にしました。あと、クラシック(ベートーヴェン)とロマン(ショパン)ですが、はじめは、告別ソナタの第3楽章と、木枯らしのエチュードを弾く予定でした。でも、弾いていてもあまりしっくりこなかったんです。それで先生と相談して、もっと年齢を重ねて内面的な表現ができるようになってから再挑戦しよう、という結論を出し、今回の2曲に変更しました。

◆「弾きたい!」と思える曲を選ぶことが、楽しく練習を続けていける秘訣なのかもしれませんね。バッハとカバレフスキーで予選を通過された後に、ベートーヴェンとショパンが本選で待っていたわけですが、ここでは何か特別な練習をされましたか?

そうですね、レッスンでは、タッチや音色の変え方などを中心に、ご指導いただきました。普段からも、筋肉の使い方を意識し、一音一音を大切にしながら「丁寧な演奏」を心掛けて練習しました。

◆基本に忠実に、ということですね。それでは、本選通過から決勝までの間には?

本選通過後、決勝大会まではわずかな時間しかなかったので、一つ一つの曲よりも、4曲を演奏する上での力の配分を考えた練習を徹底しました。おかげで、当日は、最初にバッハで指を慣らし、そのあとショパンとベートーヴェンを弾き、最後に、私にとって弾きやすくて思い入れもあるカバレフスキーを持ってくる、というプログラムにしました。

◆それが見事に入賞に繋がったのですね。おめでとうございます。金賞と発表されたときのお気持ちはいかがだったでしょう。

自分の中では、ミスもあったし、課題が見えてしまう演奏だったな、と思っていたので、ベスト賞で名前を呼ばれなかったときは、「今年はダメだったんだ……」と諦めていました。それだけに、まさか金賞で自分の名前が聞こえてきたときには、本当にびっくりしました! 何が起こったのか分からないまま壇上に立っていたんです。でも、祝賀会で武田先生が抱きしめてくださって……、そこでやっと実感として嬉しさがこみ上げてきました。

◆その時の嬉しさが今でも伝わってくるようです。見事、入賞者記念コンサートにご出演いただくこととなりましたが、そこでまたすぐに曲目を決めなくてはならなかったのが、大変だったのではと思われます。

そうなんです。プロコのOp.2を、今夏初めて聴いて、「この曲を弾きたい!」って思いました。ただ、私、プロコフィエフを弾いたことがなかったので、正直弾けるのか不安でした……。でも、4曲ある中の3曲目が弾ければこの曲にしようと自分で決めて、さっそく練習に取りかかりました。9月頭には、何とかやれそうだと感じたので、この曲で申込をしました。こちらを弾くにあたっては、「楽譜を正しく読む」ということを何より心がけているところです。自分がどう弾きたいか、ではなく、楽譜に忠実、かつ、細かいところまで表現するようにしたいと思い、今は曲の背景までも含めて勉強しています。今回、コンペでカバレフスキーを弾いたのがきっかけとなって、ロシアの重厚な音楽に興味を持つことができました! ここでさらに、プロコフィエフを通じて、より深く理解できるようになっていけたらいいな、と思います。

◆太田さんには、まず「弾きたい!」が原動力にあるんですね。そこに留まらず、背景まで勉強された上で、一音を大切に奏でていく。入賞者記念コンサート当日、演奏を拝聴するのが楽しみになって参りました。

ありがとうございます。入賞者記念コンサートは私にとって夢の舞台で、「いつか出たい!」とずっと思っていました。当日、皆さんの前で晴れやかな演奏ができるように、精一杯頑張ります!

◆最後に、今後の抱負などありましたら、お話しいただけますでしょうか。

今年はいろんな意味で「まだまだ足りない」と実感しました。来年は、リサイタルを開く機会もいただけたので、一時間のステージを提供できるよう、体力的にも精神的にも力のバランスを考えた練習をしていこうと思います!

(取材日:2013/11/07)

演奏動画

支部入賞者記念コンサート ゲスト出演