指導×演奏の両立によって生み出されるもの
2台ピアノ上級
植田味香子 さん
★演奏曲目★
ローゼンブラット:カルメン・ファンタジー
◆植田さんはピアノの指導者としてご活躍されていますね。
日ごろからレッスンとともに、自分の演奏活動をいつも両立して行っています。今年度初めて、ピティナ・ピアノコンペティションも受けることになったのですが、生徒さんや周りの皆さんのご協力があって、今回無事にやってこれたのだと思っています。
◆今年度になって初めて、コンペにご挑戦された理由は何だったのでしょうか。
まず、環境の変化が重なりました。そして、私の尊敬する先生から「出てみたらどうか?」と勧めていただいたこともきっかけの一つです。その方も過去にコンペに出場されていらっしゃり、私もかねてより指導者という立場だけでなく、参加者の立場からピティナに関わってみたいという気持ちもありましたので、今回挑戦してみることにしました。
◆ひとことで「コンペ」と言っても、指導者と参加者では捉え方が全く異なるのですね。植田さんは2台ピアノだけでなく、連弾にも挑戦されていますね。
はい。どちらも橋元さんとペアを組んだのですが、すぐに「2台ピアノも連弾もやろう」ということで意見が一致しました。隣で息を感じることのできる連弾も、対面型の2台ピアノも、それぞれの良さがあります。どちらも並行して練習することで、様々なことに改めて気付けると思ったのです。
◆どちらも並行して練習することに意味があるのですね。課題曲の「吉松隆/ランダムバード変奏曲」はどのようにしてお決めになったのですか?
この曲は、もともと、私と橋元さん両方のレパートリーにあった曲でして、曲決めの際にもすぐに意見が一致しました。私たち、タイプの違う2人ですが、それぞれの良さが出せる曲だなと思ったんです。そして、ソロでいう「四期」のように、時代時代の勉強もしたかったので、連弾の方ではラフマニノフの曲を選んで、あえて「ロマン派」と「近・現代」という違った時代の曲を選びました。
◆確かに、ソロでは「四期を学ぶ」ことを重視しておりますので、必ずすべての時代の曲を弾きこなさなければなりません。連弾・2台ピアノという形態の違いだけでなく、時代の違いも意識されたのですね。では、予選通過後はどのような練習をされたのでしょうか。
予選後、東京から戻ったすぐ後に名古屋で連弾の本番を控えていて、疲れもあって連弾に頭を切り替えるのが大変でした。また、橋元さんとは住まいが離れていましたが、練習の間隔を密にしていって、練習以外でも一緒の時間を共有することを心がけました。それに加え、曲に対していつも新鮮な気持ちで向き合う工夫をしました。例えば、それぞれの空いた時間に、鳥たちの声を聞いてイメージを膨らませるために、軽井沢に出向いたんです。そこで耳にした鳥たちの鳴き声が、音楽に置き換えたらどんな調性感やリズム、フレーズになるのかを考え、自分たちの演奏に組み込んでいきました。イメージが掴めただけでなく、心も浄化されて、気持ちのリフレッシュにもなりました。
◆実際に鳥の声を聞きに行かれたのですね! これにはとても驚かされました。2台ピアノで見事第1位をご獲得されたときのお気持ちはいかがでしたか?
今思えば、本番では精一杯演奏できたかな、と思うのですが、初めてのコンペということで緊張してしまい、「私たちの目指す完璧な演奏」というわけではなかったので、正直不安でした。表彰式の時点で、連弾(※グランミューズ部門Dカテゴリー)で1位をいただけたということは分かっていたのですが、2人の目標が「連弾・2台ピアノの両方で1位を獲得すること」でしたので、2台ピアノでの1位が決まったときは、目に涙を浮かべながら橋元さんと手を握り合って喜びました。
◆両部門での第1位という快挙、本当におめでとうございました! 3月の入賞者記念コンサートでは「ローゼンブラット/カルメン・ファンタジー」を演奏してくださいますね。
ありがとうございます。この曲はレパートリーにあったものではなくて、最近2人で一緒に聴いて初めて出会った曲なんです。私たちの持ち味が出せる曲で、1位が決まる前から橋元さんと「入賞者記念コンサートに出られることになったらこの曲を弾こうね」と言っていました。秋に差し掛かるころから練習を始めて、今は、2人で会う日の間隔をつめている段階です。
◆コンペが終わる前から決めていらっしゃったんですね。当日の演奏も楽しみにしております!
ありがとうございます。入賞者記念コンサートは、「コンサート」であると同時に「フェスティバル」でもありますので、様々な環境の中でコンペを頑張ってきた出場者の方々と、色々なお話をしながら、空間や音楽を心から楽しんで演奏できたらいいなと思っています。
◆当日もよろしくお願いいたします。最後に、次の目標に向けての抱負をお願いします。
今回コンペで経験し、学んだことを、自分の演奏活動や、生徒さんが本番を迎える際のケア・サポートに生かしていきたいと思っています。そして、今後もピティナに対して、指導者という立場だけでなく、それ以外の方面からも関わっていきたいです。
(取材日:2014/01/13)